信州ソウルフード放浪記VOL.23 むしり

今年の7月のこと。
佐久地方で有名な「むしり」を食べた。

むしりとは何か?鶏の半身を焼いたものだ。
焼き方に特色があり、ふんわりカリッと焼けていて、身をむしりながら食べるのだ。

このむしりは佐久の中込地区の食堂で売られている。

佐久市中込にある食堂瀬川

行って見ると目指す食堂・瀬川はあった。
電話をかけて予約してある。

時間前だが店をのぞいてみる。
中にはテーブルが一つ。カウンター内にはお姉さんが一人。
声をかけると、中では待てないので車で待て、とのこと。
店内での飲食、待合の禁止はコロナのせいなのかどうかはわからない。

予約受け取り専門

予約時間が来て、改めて店に入りむしりを受け取る。
熱々のものが新聞紙にくるまれて手渡される。
半身で1000円ほど。

むしりは新聞紙にくるまれ、包装紙をかけて手渡される

帰ってから包みを開け食べてみる。
なるほど、外側パリっの中ふんわりでむしりながら食べるのがうまい。
クリスマスなどにローストチキンを買って食べることがあるが、同じような焼け具合だ。

しょうゆ味のタレで焼かれた「むしり」

また一つ信州のローカルフードを知ってしまった。

キューリの粕漬

塩漬けのキューリが直売所に出ていたので買っておきました。
上田の岡崎酒造に酒かすが出ていたのでこれも買っておきました。

10月に入ったある日、思い立ってキューリの粕漬を漬けてみました。

買っておいてひと夏越したキューリの塩漬け、冷蔵保存でまったく劣化していません。

さっそく塩出しです。
水に半日漬けてみますが、キューリの塩っ辛さは全く抜けていません。
一晩塩抜きすることにします。

塩漬けキューリの塩出し

ある年、自分でキューリとナスの塩漬けを作ってみたことがあります。
しばらくたって樽を開けてみると、キューリの果肉が崩れていました。

夏野菜の塩漬けはなるべく早くに野菜の水分を抜くのが肝心です。
多めの塩と重い重しで2度漬けするのがいいようです。

直売所で入手したキューリは思いっきり塩辛く漬かっておりました。

一晩塩出ししたキューリ

一晩塩出ししたキューリを粕に漬けます。

岡崎酒造謹製の酒かす

粕に砂糖を混ぜて滑らかにしてゆきます。
砂糖の分量は粕の半分ほどです。
レシピには塩も混ぜるとありますが、キューリがしょっぱいので小さじ1杯程度にします。
砂糖にはザラメを混ぜます。

板粕に砂糖を混ぜる

岡崎酒造の板粕、いつだか、買い求めたとき、先代の同酒造おかみさんに「酒粕何に使うの?」と聞かれ、粕漬用にと答えると、「もったいない、漬物にはもっと安いやつでよい。これはかす汁とか甘酒に使って」と指導をうけたっけ。
おかみさんごめん、やっぱり粕漬に使わせてもらうわ!

粕が滑らかになり、いよいよ漬け込みます。
洗って乾かしておいた甕を用意します。

板粕を練ってゆく
砂糖と混じって滑らかなつやが出る酒かす

甕の底と、最後のキューリの表面に粕が残ることを意識し、またキューリとキューリの間に粕をサンドイッチすることを意識します。

甕にキューリを漬け始める
キューリを漬け終える

ラップで密封し、布巾で口を閉めて冷暗所に保管です。

いつ食べられることやら。

蓋をして保存

ドライプルーン

9月下旬の信州。
出盛りの果物は、ナシ、リンゴ、ブドウだが、まだまだイチヂクだったり、プルーン、モモもあったりする。
夏の果物の最後は完熟でしかも安い。
直売所に一袋250円のプルーンがあったので即ゲット。

いつもはジャムにするプルーンだが、今年はプルーン、プラムは結構な量をジャムにした。
ジャム以外の加工方法はないものか?

そうだ、乾燥という方法がある。
干し柿、干芋は毎年作っている。
ドライプルーンにチャレンジしてみよう!

事前にネット情報をチェックする。
砂糖をまぶし、水気を引き出しつつ、グリルや炊飯器を使って乾燥(半乾燥)させる、という方法が主流のようだ。

確かに、天日乾燥など、時間もかかるし晴天が続くとは限らない。

干し柿作りには半月かかる。
切り干し大根には、夏の晴天日数で3,4日かかる。
水気たっぷりのプルーンを天日だけを頼りに、腐らせずに乾燥させるのは日本ではむづかしい。

とはいえ、砂糖を使っての即席乾燥はどうなのか?
せっかくだから標高1400メートルの強烈な紫外線を利用したい。

そこで日中は天日に干し、夜はストーブを使って乾燥させる作戦にした。

プルーンを半分に割り、種を出す。
完熟したプルーンは種も取りやすい。
小さな実は、完全に二つ割りにせず、開いた形にしておく。

35度の焼酎を殺菌で噴霧してからお日様のもとへ。

35度の焼酎を噴霧

早速、小型スズメバチが網の隙間から入り込みザルの上でプルーンにたかっている。
果物の熟れた、発酵した匂いは強烈に昆虫たちにアピールするようだ。
このスズメバチをどうしよう?

放っておくと夕方には元気なスズメバチも座り込んだりしている。
そこで、弱ったスズメバチを割りばしで挟んでつまみ出した。
熱射地獄から半日ぶりに外に出されたスズメバチはのろのろと歩くだけ。
難なく踏みつぶすことができた。
害虫2匹を捕獲の上、殺処分。

編み付きザルで天日干し

夜はストーブの熱を利用。

金属製のざるにプルーンを広げ、アルミ箔を敷いたストーブに乗せて一晩。
焦げないが乾燥も甘い。

翌日は天日乾燥の後、フライパンにアルミ箔を敷き、プルーンを乗せてみる。
水分とともに糖分が抜け、焦げる。
プルーン本体が焦げなかったのが幸い。

かなりドライになってきた。

2日目の天日干し
フライパンを使ってストーブで乾燥

繰り返すこと3日。
ほぼできた。
冷蔵庫保存では長期間保存の自信がないので、冷凍庫保存にしようと思う。

出来上がり

余談

ドライフルーツで思い出すのが、おじさん26歳の時に放浪した南アジアの国。
特にパキスタンからイラン、トルコにかけて、市場に行くと荷台に山盛りのドライフルーツが売られていた。

品目はナツメヤシやアンズ、ブドウなど。
時には藁や砂が混じったまま乾燥しているワイルドな果物は、旅の途中の栄養補給にぴったりだった。
あの辺の国々、スイカやメロンの甘さも絶品だが、携行性、保存性という点ではドライがダントツだった。

パキスタン北部のギルギット。
インダス川上流の轟々たる川音を聞きながら、宿の部屋で、大きめの一袋、乾燥アンズをひたすら食べ続けたことを思い出す。
思えばあのころからドライフルーツのファンになったのかもしれない。

モモとネクタリンを加工

夏は信州の農産物、特に果物が集中して出荷される季節。
6月下旬のアンズに始まって、プラム、プルーン、ブルーベリー、モモ、ネクタリン、ワッサー(モモとネクタリンの掛け合わせ)など。
秋にかけては、イチジク、ナシ、ブドウが出てリンゴが収穫される頃になるとシーズンの終了です。

どれも産地特有のおいしさがあります。
盛りの安い時に仕入れて、ジャムなどに加工するのが毎年の楽しみです。

最近では山小舎特製のジャム類の評判も良く、この前泊って行った来客にお土産で持たせたプラムのジャムが美味しかったとの反応もありました。

モモのコンポートづくり

実は長野県は全国有数のモモの産地でもあります。
長野市周辺の川中島が有名な産地ですが、各地の直売所などへ行くと、地元産のモモが売られています。

今回は上田市丸子地区の直売所で5個400円で売られていたモモをゲット。
コンポートにしてみました。

半分に切り、種を取って皮をむきます。
よく熟れています。

水に砂糖を溶かし、白ワインとレモンを少々。
砂糖が溶けたころに切ったモモを加えて30分ほど煮ます。

熱いうちに煮沸した瓶に詰め、蓋を軽く締めてから再び煮沸して蓋をきつく締めます。

余ったシロップは寒天に溶かすとフルーツ寒天ができます。
夏の特産品が一つ完成です。

ネクタリンのジャム

モモやネクタリンなどは、地元のスーパー、直売所などでは箱で売られています。
出盛りの時期を狙って買います。
完熟していて、値段も安い品物が手に入ります。
今回は長和町の道の駅で、ひと箱900円ほどで売られていたネクタリンを手に入れました。

生食でも十分おいしそうなネクタリンを煮てしまいます。

皮をむいて、実をカットし砂糖と一緒に煮ます。
思いのほか実が煮崩れしませんが、とろみがついたころで切り上げます。

季節の果物のジャムは風味がよく、短い夏の贈り物として1年間楽しみます。

信州ソウルフード放浪記VOL.22 名物4種盛

先日の2家族来屋の折、ちょっとした悪戯メニューでお客さんを歓迎しました。

信州名物の4種盛合わせです。

内容は、イナゴ、カイコ、鯉、鮒。
それぞれ佃煮や甘露煮で調理されています。

どれも諏訪地方、上田地方の地元スーパーや直売所などで手に入る、現在も地域で食べられている食材です。

プレートに盛つけそれぞれに名札を付けました。

お客さんはそれぞれ、新潟、福島、徳島のご出身。
思ったより信州名物に対するガードは低く、むしろ「子供のころにイナゴを食用に採らされた」とか「イナゴは食べたことがある」などと食材に対する親和性の高さに驚かされました。
皆さん30歳台の若さにあって、です。

結局は、つまみ代わりに全種類箸をつけてもらえました。
山小舎への信州への好奇心と、フレンドシップに感謝です。

次回は、ハチの子、ザザムシなども用意して歓迎しましょうか。

信州ソウルフード放浪記VOL.21     立食い蕎麦「桔梗」の山賊焼きのせ

塩尻に寄ったときに、塩尻駅構内の立食い蕎麦屋で昼食を摂りました。

桔梗という屋号の立食い蕎麦屋で、駅の売店の並びにあり、待合室に続いた一角で営業しています。
三々五々、旅行者や通学の高校生などがよく食べています。

茅野駅構内の立食いそば店が「白樺亭」から経営が替り、味が濃くなって値段が高くなりました。
塩尻駅の「桔梗」は変わらず営業しているようです。

塩尻駅構内に売店、蕎麦、待合室を合わせた一角がある

食券を買おうと自販機を見ると、山賊焼き乗せ、というメニューがありました。
フルサイズの山賊焼きが乗った蕎麦はすでに売り切れで、ハーフサイズが販売中でした。
山賊焼きは信州の名物で、鶏肉を広げて揚げたものです。

山小舎おじさんは山賊焼きを食べたことがなく、珍しいので、ハーフの山賊焼き乗せを注文してみました。
立食いそばにしては高価な700円です。

暖簾をくぐって注文する

出てきた山賊焼き乗せ蕎麦です。
ハーフサイズの山賊焼きが乗っています。
おなかがすいていたので一気に完食しました。
満腹になりました。

山賊焼きハーフサイズ乗せ。満足!

そもそも駅の立食い蕎麦屋さんは、地元の人から一過性の人までが思い思いに立寄ってゆく場所です。
旅心が刺激されます。
客の回転がいいので、常に新しいものが出てきますし、不特定多数の客に鍛えられたであろう、味もいいことが多いのです。

信州は蕎麦の産地ですので、蕎麦自体の味も期待できます。
その点、塩尻駅の「桔梗」は十分及第点をもらえるものと思います。
地元名物の山賊焼きも同時に味わえて、いいものをいただきました。

観光シーズンを迎えた塩尻駅前景

信州ソウルフード放浪記VOL,20 小海町の風とり食堂

八ヶ岳の東山麓、国道141号線沿い。
高原のパン屋さん、スーパーナナーズの並びに食堂風とりはあります。

バイトの草刈りで一緒の管理事務所の職員さんが教えてくれた食堂です。

八ヶ岳を茅野から小海町へと横断する、メルヘン街道の麦草峠を越えてゆきました。

高原のパン屋さんもスーパーナナーズも、小海町を通る際には寄るところですので、目指す風とりもすぐわかりました。

食道正面全景
店先のメニュー表

おすすめの風とり丼を注文します。
とんかつのほかに、白身魚とエビとイカのフライが乗ったどんぶりです。
最近少食になった山小舎おじさんにとって、思いのほか量が多く、やっとの思いで完食しました。

メニューより
お店おすすめの風とり丼。

正直いって、イカやエビのフライはともかく、メインのとんかつが〈通常レベル〉のものなので、満腹以上になると胃に入ってゆきません。
とんかつ専門店ではない食堂なのでしょうがありませんが。
風とり丼は若い人向けのメニューでした。

かの別荘管理事務所の職員さんは、カツ丼とラーメンのセットを食べると言ってました。
若いです!

休み休み食べ終えた山小舎おじさん。

店を出ると10人近くのライダー集団が、佐久方面からやってきて食堂の駐車場に入ってゆきました。
ライダー飯としても有名な場所のようです。

今度来るときがあったら、信州サーモン丼か馬刺し丼にしようと思います。

巨大ズッキーニを食す

ズッキーニという作物は実が成ったままで放っておくと巨大化します。

キューリなどもそうですが、採り遅れて巨大化すると種ができてきます。

キューリとズッキーニが異なるのは、ズッキーニが巨大化してもあまり食味に影響しない点です。
地方の直売所などには巨大化したズッキーニを安く売っているところもあります。

7月上旬に1週間畑を留守にしていた山小舎おじさんは、今年も巨大ズッキーニと対面することになってしまいました。

3本ほどは山小舎にやってきた奥さんに持って帰ってもらいました。
そのほかに巨大キューリをたくさん持って帰ってもらいました。
山小舎には2本の巨大ズッキーニが残りました。

1週間不在の後の畑で収穫したズッキーニ
この日のキューリもご覧の通り

山小舎ではズッキーニを〈夏のオールマイテイの野菜〉として重宝します。

カレーに入れます。
豚汁には大根代わりに入れます。
ソテーしてもおいしいです。
冬瓜の代わりにダシで煮てあんかけにしてもいいでしょう。

山小舎の「普段使い」のズッキーニ
断面。中央部分にできたワタはが取り除いて使う

この日は豚汁に入れることにしました。
巨大ズッキーニは台所に転がしておいて、必要に応じて輪切りにして使います。

豚汁の具にするときは、一番最後に入れます。
煮すぎると煮崩れするからです。

豚汁に投入したズッキーニ

煮崩れするとせっかくの歯触りが失われてしまいます。

しばらくは夏の恵みをいただけます。

信州ソウルフード放浪記VOL,19 岡谷の鰻

長野県民がごちそうと思うのは、てんぷら、マグロ、うなぎだそうです。
諏訪湖を擁する諏訪、岡谷地方では、ワカサギと並んでうなぎが古くからの名物です。

昭和元年には、諏訪湖、天竜川周辺で38トンのうなぎの水揚げが記録されています。
現在では天然うなぎを商いする鰻屋はほとんどみかけないものの、諏訪湖と、そこから流れ出る天竜川に接する岡谷市は、うなぎのまちとして町おこしをしています。

町おこしパンフレット表紙

山小舎おじさんも家族が来た時など、諏訪湖周辺へ出て鰻を食べることがあります。
この日は岡谷にある小松屋という店へ行ってみました。

パンフレット内内容

料亭風のアプローチを経て玄関をくぐります。
この日のメニューは鰻重、鰻丼、鰻定食の三種類のみ。

しっかりとアクリル板で区切られたテーブル席に案内されます。

出てきた鰻重。
ふんわりと柔らかく焼けており食べやすかったです。

小松屋の玄関
鰻重。ご飯の量もちょうどよく、満腹。

岡谷の鰻というと、蒸さずにパリッと焼き、甘辛いたれをかけた店が多いのですが、小松屋さんは関東風に近い食味でした。

入店時はパラパラだったお客さんが、あっという間に満席になりました。
退店したときには、完売の看板がかかっていました。

完売御礼の看板に見送られて退店

岡谷周辺には、水門、観光荘などの有名鰻店が点在しており、どこも常に満員です。
家族が来た時に、たまに食べる鰻が楽しみな山小舎おじさんです。

アンズの季節

6月末から7月にかけてはあんずの季節です。

プラム類、桃、ナシ、ブドウ、リンゴと続く信州の果物シーンのトップを飾って登場するのがアンズ。
上田から千曲市にかけての一帯が名産地です。

今年もアンズを買いました。ジャムとコンポートに加工しました。

独特の甘みの中に酸味を感じることができるのがアンズの特徴です。
生食よりも加工してより特徴が出る果物のような気がします。

独特の色味もいいですね。
日本的な果実です。

ジャムができました

信州にもいよいよ夏が到来しました。