7月に入っての流れ旅。
岐阜との県境にある野麦峠へ行ってきました。
野麦峠はかつて、松本や諏訪と飛騨を結ぶ主な峠道でした。
小説と映画の「あゝ野麦峠」の舞台です。
飛騨地方の娘たちが岡谷の製糸工場へ雇われていったときの通り道です。
深い山を分け入るルートで、現在では車道が開通していますが、通行量はほとんどありません。
長野と岐阜の行き来は、ここより北にある安房峠と安房トンネルが一手に引き受けているようです。
工女たちが通った古の峠道を見たくて、朝の時前、野麦峠に向けて出発しました。
中山道・奈良井宿
山小舎から野麦峠へは、まず、塩尻へ下りて国道19号線を南下します。
塩尻の町を過ぎ、郊外の葡萄畑が広がる景色を過ぎると、道は山へ分け入ってゆきます。

中山道(国道19号線)の宿場の一つに奈良井宿に通りかかります。
明治以前の景観が保存されている宿場です。

狭い間口の家が、つながるように並んでいます。
格子戸や窓を持った家々です。
その景観は時代劇映画のセットのようです。
現在は、住居のほか、宿だったり蕎麦屋カフェだったり、漆器を売るお土産屋などとして利用されています。

見事な景観ですが、江戸時代から変わらず保全されていたわけではなく、昭和の末期に、景観保全の補助金が出るようになってから、外観を改築・整備したとのことです。
各戸の申請を国が審査して補助金が下りるまで2年くらいかかったそうですが。

田圃が作れず、木材など山の産物があるだけの土地なので、たまたま近年まで多くの景観が残っていたこともあったのでしょう。
今ではインバウンドも含む観光地となっています。

木祖村、松本奈川を通って野麦峠へ
奈良井宿の観光を終え、駐車場のおじさんに野麦峠までのルートを聞きます。
「野麦峠?お助け小屋に行くの?」と言って詳しいルートを教えてくれます。
「今日はどこまで行くの?岐阜の方へ下りちゃったら?乗鞍に行くの?スーパー林道通るんだね?」と地元情報満載の受け答えです。
ここから先は、道路標識があまりないルートです。
おじさんに教わった通り、国道から県道に入ります。
木曽川の源流の村をキャッチフレーズにしている木祖村を通ります。
地元のスーパーがあったので寄ります。


海苔巻きとお稲荷さんのパックとタケノコに煮物を買います。
木の葉でくるんだ珍しいお餅があったので買ってみます。
ぐっと交通量の減った県道を行くと、境峠というなだらかな峠道を越えて松本市奈川地区に入ります。
山に囲まれたひっそりとした地区です。
奈川からは野麦峠までの1本道に入ります。
両側から山が迫り、対向車もなくひっそりと湿った山道が続きます。
やがてロードサイドに、石をアーチ形に組んだトンネルのようなものが見えました。
軽トラを止めて案内板を見ると、冬の野麦峠越えの旅人を凍死から守る室とのこと。
かつての峠越えの厳しさがうかがえます。

帰りはこの道を引き返すのか?と暗い気持ちになっていると峠に到着しました。
ここからは岐阜県です。
広めの駐車場とトイレがあります。
あゝ野麦峠のモチーフを模した像が建っています。
少し離れたところに「お助け小屋」があります。


古民家のような造りのお助け小屋は、広い座敷と食堂、展示室を持った木造の建物です。
展示室には映画「あゝ野麦峠」の資料、出演者の色紙などが展示されています。
野麦峠を行き来して黎明期の日本資本主義を支えた工女たちを題材にした絵画も展示されています。



折角なのでほかに誰もいない食堂で蕎麦を注文。
食堂に展示されている映画のロケ風景を模した水彩画などを見乍らいただきました。
食堂の正面に明治時代の女性の写真が飾っているので食堂のおばさんに聞きました。
彼女こそが「ああ野麦峠」のモデルとなり、映画では大竹しのぶが演じた政井みねという工女さんなのでした。


お助け小屋から10分程度で登れる展望台へ行きました。
政井みねさんが故郷の飛騨を、亡くなる前に一目遠望したという場所だそうです。
観音像が立っています。


乗用車とバイクが常に数台入れ代わり立ち代わり停車している駐車場を出て元来た道をたどりました。
来た時の登りよりはずっと楽に行けました。
乗鞍高原温泉の濁り湯
野麦峠からの帰り道は松本経由のルートにしました。
奈川に下りてから北上し、松本郊外に出て山形村、塩尻を経て帰るのです。
その前にまだ行ったことのない乗鞍高原に、少し遠回りして寄ることにします。

ダム湖を見てトンネルをくぐると乗鞍への分岐点に出ます。
山に分け入る道ですが、野麦峠への道よりはずいぶん開けています。
上高地へ向かう沢渡や、駒ケ岳登山口のように、マイカー乗り入れを禁止しシャトルバスで登山客を運ぶスタイルの乗鞍高原。
広い駐車場に軽トラを止めます。
県外ナンバーの自家用車や自転車で遠乗りした人などの姿が見えます。


湯けむり館という立寄り湯に寄ります。
白濁したお湯の硫黄臭さがいつまでも体に残りました。
ぬるくていつまでも入っていられるお湯でした。
白骨温泉に似ていました。

映画「あゝ野麦峠」
手許に1979年制作の映画「あゝ野麦峠」のパンフレットがある。
山本薩男監督、大竹しのぶ主演の東宝配給作品だ。

クランクインを野麦峠ロケで行い、東宝撮影所内に岡谷の製糸工場を再現したとのこと。

冬の峠越のシーンでは岐阜県側の地元の中学生も参加したとのことである。
