蓼科高原映画祭に行きました

毎年9月に茅野で開催される、蓼科高原映画祭。
小津安二郎記念と銘打ち、今年で21回目。立派に続いている。

なぜ、小津安二郎記念の映画祭が茅野で開かれるか。
蓼科の別荘で、かの巨匠が毎年のように脚本を練ったという経緯があるから。
別荘は共同脚本家の野田高梧の持ち物だった。
小津は別荘の縁側に、お気に入りの茅野の地酒・ダイヤ菊の空瓶をずらりと並べるほど時間をかけて構想を練ったという。

巨匠と呼ばれ、東宝という別会社の看板女優である原節子と初めて組んだ、昭和24年の「晩春」以降の作品が、野田との共同脚本となる。
それら、小津後期の代表作群は、発表当時、松竹ヌーベルバーグと呼ばれた社内の若手監督(吉田喜重ら)に旧態依然と批判された。
現在では、海外の映画雑誌が歴代の映画ベストテンを選出する際に、小津の代表作「東京物語」が上位で選出されるほどに評価が定まっている。

さて、今年の蓼科映画祭。上映される小津作品は、無声映画の「学生ロマンス若き日」と「東京物語」の2本。ゲストに香川京子が招かれている。
去年は、「小早川家の秋」の上映後に司葉子がゲストトークし、プライベートで仲の良かった原節子の思い出話を披露していた。
毎年、綺羅星のごとき往年のスターがゲストで参加するのも、小津安二郎の名声に負うところが大であろう。

映画祭の会場となるのは、駅前の茅野市民館と、市内唯一の映画館である新星劇場の2か所。
この新星劇場、現在では常打ち館ではないのだが、35ミリ映写機とデジタル映写機を併せ持ち、天井が高く、スクリーンが大きい、昔ながらの映画館なのである。
座席に座ると、東銀座にあった、銀座シネパトスという映画館を思い出す。隣を走る中央本線の列車の音がかすかに聞こえるのも、昔の映画館ぽくて良い。

映画祭の運営は、そろいのTシャツを着たボランテイアスタッフによって行われる。
会場前には無料のコーヒーとポップコーン、そしてダイヤ菊の樽酒が置かれ、スタッフによってふるまわれる。来年も映画祭に行くのが楽しみだ。

茅野駅前の商業ビルの2階には、常設の小津を紹介するコーナーがある。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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