ラピュタ阿佐ヶ谷の特集上映より 任侠映画のヒロインたち ⑤ 工藤明子

工藤明子

1944年生まれ。
劇団を経て71年に東映と専属契約。
72年まで、主に鶴田浩二主演の任侠映画の相手役として、東映作品14本に出演する。
本編「札付つき博徒」は、東映4本目の出演。
若き大型美人女優として重要なわき役を務める。

70年前後の東映映画の女優陣は、佐久間良子、三田佳子などかつてのホープはすでに去り、『不良性感度』の高い作品が製作された。
人気企画、任侠映画にあっては、緋牡丹博徒シリーズで主役を務める藤純子を別格として、時代劇全盛時代からのキャリアを誇る桜町弘子、宮園純子などのほか、浜木綿子、松尾嘉代などが、男優たちの相手役を務めていた。

やがて頼みの藤純子も映画界を去り、後に日活からやってきた梶芽衣子が「さそり」シリーズで狂い咲くまで、東映映画にヒロインらしいヒロインは不在だった(スケバンシリーズなどでの池玲子、杉本美樹を除く)。

工藤明子

この間、東映でも新人女優発掘の試みは続けられ、多岐川裕美や中村英子、中島ゆたか等有望株がデヴューはしていった。
工藤明子も東映が発掘した自前の女優の一人であり、その大型の美貌は、朝ドラ女優(74年 「鳩子の海」)の藤田美保子にも、後輩の中島ゆたかにも似た華のあるものだった。
70年代の「キネマ旬報」では、工藤明子の名前が散見され、一部のファンに支持されたもいたことがうかがえた。
東映らしい、水商売的なテイストの薄幸型美人女優で、東映を離れた後はテレビの時代劇やアクションもので活躍した。

今では忘れられたヒロインともいえる工藤明子の出演作に駆け付けた。


「札つき博徒」  1970年  小沢茂弘監督  東映京都  ラピュタ阿佐ヶ谷・35ミリ上映

鶴田浩二主演の東映京都作品、監督小沢茂弘。
このメンツを見て、どんな旧態依然とした任侠映画を見せられるのだろう?と、昔、浅草名画座で見た同じメンツの作品「三池監獄 凶悪犯」(73年)を思い出しながら、期待せずに開映を待った。
始まった映画は、意表を突く素早いカッテイングのテンポの速い展開と意外な登場人物のキャラクターとその配役だった。

意外な配役とは。
すでに御大的存在だった鶴田に謙虚なムショ帰り役を割り当てる。
それに絡むのが万年悪役の小池朝雄で、珍しく根が正直な曲者役、その連れに山本麟一。
戦前の北九州戸畑の祇園山笠前夜が舞台という時代設定も、現実感皆無な大時代的なものでいい。

オリジナルポスター。左に工藤明子の女賭博師

鶴田に合わせたかのように、セミ大御所の大木実に盲目の堅気を演じさせる。
その連れ合いの桜町弘子は終盤までセリフがない役で、持ち前の勝気な姐さんぶりが封印されている。
待田京介までが弱気な堅気役だ。

旧態依然とした配役と、ワンパターンな勧善懲悪劇を良くも悪くも期待していた、鶴田=小沢コンビが、見事に予定調和を外して始まったこの映画。
主役は祇園山笠の祭そのもので、祭りを運営する堅気衆が前面にフィーチャーされた構成なのだった。
ときどき東映で企画される、ハンデイキャップを背負った集団や個人が悪に対峙するという変則パターンのやくざものの一種なのだ(脚本:笠原和夫)。

いつもは、墨を背負ってドスを利かせる連中(大木、待田、小池、山本ら)が、一歩引いて悪役やくざの恫喝のを前に、右往左往する堅気衆を演じるという新鮮味ある筋立て。
待望の工藤明子は身寄りのない女壺振り師として登場する。

一場面。後姿が工藤明子

素人離れしたクールな美貌にキレのある啖呵。
殺陣のシーンでの動きもいい。
工藤明子の魅力が炸裂する。

藤純子の緋牡丹博徒と異なり、凄惨な殺陣演出の後、傷を負い、やられてゆくのもいい。
耐え忍ぶ設定から、正義感に駆られての殴り込み、そしてやられるまで、鶴田のお株を奪う出来だったのではないか。
惜しむらくは、藤純子や江波京子らの二番煎じ、メインストーリーである主人公らのうっぷん晴らしに花を添えるための補助的役柄だが、魅力は十分発揮した。

堅気衆側の唯一の暴力装置であるムショ帰りの鶴田浩二も死んでゆく。

ヤクザは死に絶え、堅気衆が残って祇園山座差は無事挙行される。
ヤクザ礼賛に堕ちてはいないストーリー。
半端者で調子はいいが、良心は失わなかった小池朝雄も生き残った、珍しく。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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