たづくりでCINE WORKS展、新東宝・近代映画協会展を見る

2026年の調布シネマフェステイバルの開催に合わせて、市民会館たづくりで「CINE WORKS展」が開催されています。
前日投稿した「出張!映画資料室 日活撮影所70周年」と同時期での開催となり、山小舎おじさんは二つの会場をハシゴしてきました。

CINE WORKS展ポスター

会場に入って驚かされるのが怪獣が街のミニチュアを壊して暴れ回る様子のセットです。映画撮影所自体は閑散としていても、こういった特殊技術的というかニッチなマニアックさというか、は発展しているのですね。

「ゴジラ」第一作についての展示
平成ガメラシリーズについて
怪獣のセット
怪獣のセットを別方向から

CINE WORKS展の方は撮影自由なのですが、隣の部屋の近代映画協会と新東宝の歴史資料展の方は撮影禁止でした。

新藤兼人が吉村公三郎らと興した近代映画協会は長く続いた独立プロです。
初期の代表作「原爆の子」や乙羽信子が主演した一連の作品で有名です。
代表作の脚本や、モスクワ映画祭で賞を取り世界に売れた「裸の島」のポーランドでのポスターなどが展示されていました。

そしてなんといっても目を引いたのが新東宝の歴史に関する展示の数々です。
東宝争議から新東宝の発足、初期の他社巨匠による「おかあさん」「西鶴一代女」などの名作群、女流監督としてデヴューした田中絹代の「恋文」、活弁士として財を成した大蔵貢の社長就任と低予算エログロ路路線のいわゆる「新東宝カラー」の徹底、会社倒産と国際放映への引継ぎまでが、パネルに手際よくまとめられています。

間を飾るのは、今なお煽情的でキッチュな毒を放射する「新東宝カラー」あふれる作品群のポスター。
中川信夫、石井輝男ら新東宝で光り輝いた監督群についてや、宇津井健、前田通子、久保菜穂子ら新東宝でデヴューしその個性を後日まで発揮し続けたスター達についてのパネルもあります。

単に制作者、監督、スターらの経歴をパネルにまとめて、その間にオリジナルポスターを並べるだけではなく、新東宝史の要諦をつかんでいるかのような解説が目を引きました。
曰く「製作費が通常1500万のところ、新東宝では1000万円だった。そのため外部から巨匠やスターを呼ぶことはできず、自前の新人監督と新人俳優を養成し、使わざるを得なかった。」
「初期に外部招聘された、伊藤大輔、清水宏、渡辺邦夫、斎藤寅次郎、マキノ雅弘、並木鏡太郎、中川信夫ら巨匠や職人派に付いた新東宝採用の助監督の、井上梅次、渡辺祐介、土居通芳、小森白、三輪彰、山際永三らは、のちに社内や他社で監督昇進しそれぞれの個性を発揮した。」
「新東宝スターレットなどとして採用した俳優たちは、宇津井、久保、前田のほかも菅原文太、天地茂、高島忠夫、左幸子、三ツ矢歌子、池内淳子、三原葉子、原知佐子らがおり、会社倒産後も他社で活躍するなどした。」などなど。

掲示されているポスターのチョイスも抜群で、新東宝作品史においては欠かせない「明治天皇と日露大戦争」「東海道四谷怪談」のほかにも、「女競輪王」「地獄」「スーパージャイアンツ」「戦場のなでしこ」「大虐殺」「黒線地帯」「女王蜂もの」「地平線がぎらぎらっ」など、ニッチな作品のものが保存状態もよく掲示され、興味を引いていました。

新東宝の歴史と日本映画史におけるその役割を簡潔にまとめた展示内容に、改めて目を見開かされる思いでした。
かつて場末の映画館に潜り込み、色っぽい映画でもこっそり見るような、刺激的でワクワクする映画体験を思い出すような場でもありました。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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