又・諏訪の神様が気になるの 「諏訪の神・封印された縄文の血祭り」

諏訪の神様が気になって目についた本を読んだり、ついでに関連する場所をさ迷っている山小舎おじさんです。
「諏訪の神・封印された縄文の血祭り」という本が目についたので読んでみました。

この本を手に取ったのは、おじさんのような諏訪の神初心者でミーハー者にとって読みやすいものに思えたからです。
諏訪の神様の世界の始原は、その開闢を特定できないほど古く、文献など記録のない世界。
古事記などの文献に記録されてから以降の諏訪の神様は、果たしてオリジナルの姿を現したものなのか?それともその時代の体制にとって都合のいい姿を現したものなのか?その検証にも決定打となる傍証が乏しいのが実情。

諏訪の神様がカテゴライズされる神道の世界すらが、神仏習合→廃仏毀釈→国家神道と変遷しまくってきています、時代時代における諏訪の神様の位置づけも同様です。

学術的であればあるほど、著者が公平で客観的であればあるほど、その本が著す諏訪の神様の姿は混とんとしており、おじさんのようなミーハーな読者には、かゆいところに手が届かない、のココロ!となってしまいます。

河出書房新社刊の「諏訪の神様」は著者の想像と推察によるものとはいえ、諏訪の神様の歴史以前の姿を具体的に表し、また歴史以後のその姿については古文書に記録された背景にまで踏み込んで独自の解釈を施しつつ、その真の姿に迫ろうとしています。

本書の結論はこうだと思います。

①もともとの諏訪の神はミシャグジと呼ばれるものであり、当時信州から越後にかけての住民にとって、大地溝帯の形成にかかわる大地震を鎮めるべく生贄を供えて祈る対象だった。

②諏訪地方に蘇我馬子に追われた物部守屋一行(冤罪により逆賊とされた)が逃れ、住民に祟り神として畏怖され、タケミナカタの尊としてミシャグジ神と同じ場所で祀られるようになった。
「諏訪大明神絵詞」によるタケミナカタの尊の諏訪入り(地元のモリヤ神を破って諏訪入りした)は鎌倉時代の創作で、タケミナカタの尊とモリヤ神は同一(どちらも物部守屋だから)。

③ミシャグジ神は山、木、石を依り代(神社の本殿にあたる)とした。
諏訪大社本宮でいえば、ご神体(依り代)は境内の硯石であり、背景の守屋山になる。
そこに向かって左90度に座す拝殿とタケミナカタの尊を祭る神居は後になって祀られたことを表す。
御柱を引きずってから立てるのは生贄を供えたことの名残。

④諏訪大社下社2社の設立理由は、ミシャグジ神及び逆賊のタケミナカタの尊を祀る下社を監視、けん制するため。

どうでしょう。
①から④はおじさんの勝手な要約ですが、諏訪の神様のミーハーファンが疑問に思っていたことが明快に解説されています。
全部が著者の独自の理論ではなく、すでにオーソライズされているおなじみの内容もありますが、①のミシャグジ神の根源に切り込んだ部分は著者のオリジナルだと思います。

本宮のご神体といわれる守屋山の山頂

読後の感想は、この本が古文書に基づいたアカデミックな種類のものと、例えば小説家が自分の好みに基づいて自由に発想した時代考証ものとの中間に位置する読み物なのかなあ、です。
著者独自の世界観が展開される本とはいえ、そうだからこそのすっきり感!があります。
誰かが断言してくれるからこそ、一般の読者にとってそこの部分の歴史認識に一定の基準が築けるのです。
仮の基準とはいえ、その後の興味や理解には役立ちます。

縄文時代から続く石棒。ミシャグジ神の依り代の一つか

八切止夫という忘れられた作家がいます。
歴史大衆小説家という後年の評価でしょうが、独自の歴史観から一部に信奉者がいます。
「野史辞典」という著作は古書店で高額で売られています。

古代から中世に至る日本庶民の歴史を、八切史観と呼ばれる、アカデミックな歴史観とは180度異なる解釈で描いています。
例えば、大化の改新とは百済・唐連合軍の進駐によるクーデターで、以来、日本の権力は百済・唐由来の藤原氏が担い、原住民系の純日本人は被差別部落に閉じ込められた、というのが八切史観の根底にあったりします(山小舎おじさんの理解)。
これって、アカデミズムや権力側があえてか無意識にか、残してこなかった歴史観ですが、独断的なその表現といい、権力に忖度しない庶民目線の視界といい、おじさんのような全き庶民からすると誠に心地いいのです。

一時期は八切止夫のファンであった山小舎おじさんからすると、本書の著者・戸板学さんの姿勢にも心地よさを感じてしまうのです。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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