信州ソウルフード放浪記VOL.25 下諏訪・林家の鰻

信州では鰻が昔からの御馳走とのこと。

4月のある日、家族が毎月恒例の山小舎訪問に訪れました。
家族の来訪時には、山小舎での炭火焼きのほか、外出先での信州名物料理を食べるのが楽しみの一つです。

鰻は諏訪地方の名物の一つで、家族らとはこれまでも、岡谷、上諏訪、下諏訪の鰻屋によく行きました。
今回は下諏訪町にある林家というところへ行きました。

店へ着くと先客が一組待っていました。
30分ほど待って入店。
2階のテーブル席へ案内されました。

待っている間の店内風景
玄関のレイアウト

鰻重をいただきました。
諏訪地域の鰻は、関東風の柔らかい焼き方と、関西風のパリッとして甘辛い焼き方の二通りがあります。
岡谷を中心にした関西風の外カリ、中フワの甘辛い鰻も美味しいのですが、下諏訪の林家の鰻は関西風ではなく、一度蒸してから焼く関東風でした。

林家の鰻重

ごはんが美味しく、量的にも満足なのが信州スタイル。
肝吸いや漬物も一味違います。

いつものように大満足の信州の鰻でした

煮豚

週末の家族の来訪を待つ山小舎おじさん。
家族に人気のごちそう、煮豚を作ることにしました。

茅野のAコープ・ピアみどりで信州豚のバラブロックを買ってきます。

Aコープの信州豚は焼いてよし、煮てよしの優れもの。
炭火で焼くと肉の歯ごたえがちょうどよく、油の甘さがたまりません。
煮ると下茹でがいらないくらいにアクが少なく煮汁に濁りが出ません。
山小舎で作るカレーはもっぱら信州豚のコマ切れです。
値段も高くありません。

豚バラブロックを水から煮ます。
来客用なので一応下茹でします。

下茹で開始

茹でこぼした後、水を取替て煮込み始めます。
長ネギ、ショーガに玉ねぎ、にんじんを臭み取りに入れることにします。
酒、黒コショーを加えます。

2、3時間、薪ストーブで煮たら1日目終了。
ここで一晩おき、固まった油を除きます。

茹で上がって味付けを待つ。黄金色のスープ

翌日再びストーブで煮込みながら味付けします。
砂糖、しょうゆ、みりんに自家製チャツネ、隠し味の味噌、塩麴などを加えてさらに煮込みます。

段々いい色になってきます。
汁が煮詰まらないようにします。
ここで茹で卵を入れて煮卵にします。

卵に色がついたら出来上がり。
冷やして油を取り除きつつ、来客への提供を待ちます。

味付け1日目
煮詰まってきたころに茹で卵を投入

信州ソウルフード放浪記VOL.25 上田・刀屋の蕎麦

上田にいつも人が並んでいる蕎麦屋がある。
刀屋といってたいていの観光ガイドには載っている。

小説家で「真田太閤記」を書いた池波正太郎が、上田にひいきの飲食店が何か所かあったそうで、刀屋もそのうちの1軒だったとのことだ。

山小舎おじさん、久しぶりに刀屋へ行ってみた。
前に5人連れの家族が並んでいた。
ややあって案内された。

前回来た数年前に、てんぷら付きのざる蕎麦普通盛を頼んで、腹いっぱいだった記憶があった。
改めて注文を取りに来た女性に聞くと「小盛が東京でいうザル1盛分、中もりが2盛分」とのこと。
もり蕎麦中盛を頼む。

一口すすって記憶がよみがえった。
太く、硬い蕎麦だ。
うどんのようなフォルムでもある。
よくかみしめると蕎麦の香りがする。
中盛で腹いっぱいになる。

愛想はないが、かみしめると味があり、腹いっぱいにしてくれる。
まるで信州人のキャラのような蕎麦ではないか!

たくあん漬け込み

12月になり山小舎周辺の寒さは本格化しています。

たくあん用に買った干し大根を追い干ししていますが、大根が凍っています。
それでも寒風にさらされた大根が細くシワシワに乾いてきました。
山小舎仕舞が近づいたある日、沢庵を漬けました。

半分凍り、雪にまぶされた大根を取り入れます。

ネットで調べて塩、ぬか、ザラメの分量を量ります。
その前に大根の重さを1本ずつ量ります。

大根は4キロありました。
塩が200グラム、ぬかが800グラム、ザラメが160グラムの計算になります。

それぞれを量って混ぜておきます。

樽の底に混ぜた糠等を敷きます。
大根を隙間の内容に並べて、その上に糠等を被せます。

大根が3段ほどになりました。
大根が見えなくなるほど糠等を被せ、最後に塩を一握りふります。
蓋をして重しを載せます・・・。あつ、樽の内側に漬物用のビニール袋をセットして大根を入れる予定でした!
ビニールを使うのを忘れてました!

やむなく水漏れ防止に樽の外側にビニールを被せることにします。
重しを17キロほど載せます。
水が上がってくるかどうかが勝負です。
水が上がってくれば、1月中にも食べられるのではないでしょうか。

菊芋の味噌漬け

菊芋がたくさん採れました。
体に良い食べ物ですが、食味はよくありません。
食べ方もあまり知りません。

収穫の一部を味噌漬けにすることにしました。

調べると下漬けした後に、味噌で本漬けするとのこと。

まず菊芋の泥を落としました。

菊芋はショウガをさらに複雑にしたような形をしています。
泥が溜まりやすく、また落としにくい形状です。

まずは菊芋を水につけてしばらく置きます。
水を取り替えると泥が流れ去ります。
そのうえで、球根の間に残った泥を掻き出します。

この後、塩水につけて下漬けします。
塩をふってつけてもいいのですが、それだと1か月以上かかるので塩水にします。
重しを乗せて1週間ほど置きます。

1週間後の菊芋です。
心なしかしぼんだ感じがしますが、思ったよりしゃっきりしています。

塩水から上げ、軽く水洗いしてザルにあげます。

漬物用味噌を用意します。

これを甕の底に塗り、菊芋を敷き詰めてゆきます。
3段ほど菊芋と味噌のサンドイッチを甕に仕込みました。

クッキングシートで密閉し、重しを乗せて保存します。
1か月後、どんな味になって入でしょうか。

信州ソウルフード放浪記VOL,24 あさつゆ・くるみ亭の手打ちうどん

上田市丸子地区に直売所あさつゆがあります。
地域の野菜や加工品が手ごろな価格で集まる直売所です。

山小舎おじさんは、近くのスーパーマーケット・ツルヤで食材を買うついでなどによく寄ります。
野菜や卵のほか、季節の果物などを、時には箱買いし、ジャムやコンポートなどに加工するのが楽しみです。

あさつゆの駐車場に立つ看板。背後に初冬の浅間連峰が見える

丸子地区は、わが長和町に接しており、かつては小県郡に属する丸子町でした。
戦前は製糸業で栄え、現在は別所線だけが残る上田電鉄の支線が町まちと上田をつなげていました。

シナノ絹糸という繊維製造会社が今でも残っています。
また、山小舎おじさんが小学生くらいの時に、県立丸子実業高校(現丸子修学館高校)が夏の甲子園に出場したことがあります。

この丸子地区にある直売所あさつゆには食堂くるみ亭が併設されています。
この日、昼食をくるみ亭で摂ることに決め、あさつゆを訪れました。

あさつゆの入り口

手打ちうどんと書かれた暖簾がかかり、土日の昼間は地元の客で満員になり、うどんが売り切れることもしばしばのくるみ亭。
山小舎おじさんは何度かここで肉うどんを食べたことがあります。
手打ち独特の透明感と弾力を持ったうどんでした。

町の食堂で食べる醍醐味は、手作りの味を味わうことにあると思います。
だんだんとそういった食堂が少なくなっているような気もします。
その点、くるみ亭は手作り感満点の地元のお母さんたちによる食堂です。

入って右手に食堂くるみ亭の暖簾がかかる

この日も肉うどんをチョイス。
たまには別のメニューをとも思いましたが、あの味をもう一度という気持ちが勝りました。

寒い平日ということもあったのか、店内はほどほどの入り。
混雑を気にせず食べられます。

券売機などはなく、カウンター越しにお母さんに口頭で注文し、その場で支払って、紙のチケットを受け取ります。「○○番の肉うどん」と呼ばれるのを待って受け取りに行きます。

この手作り感、アナログ感が安心を誘います。
手打ちうどんを食べる前段としてこれ以上ない、レトロでコミュニケーション感にあふれた舞台設定です。

肉うどんはいつもと変わらない味でした。
値段も量も味も依然と全く変わりません。
長野県民の県民性(頑固さ、頑迷さ、まじめさ)がいい意味で発揮されています。

肉うどん。500円。イチオシのメニュー

食後に直売所で買い物。
切り干し用の大根、干芋用のサツマイモ、地元のごぼう、自分で食べるリンゴなど。
いつもながらの満足するラインナップがそろいました。

この日のお買い物。買いごたえ感タップリ

白菜漬け

初めて白菜を漬けてみた。

直売所で白菜が安かったので買っておいた。
195円ほどだった。

白菜は玄関先にしばらく放っておいたが、塩漬けにしてみようと思い立った。

ネットで白菜漬けの作り方を検索すると、四つ割りにして半日干してから漬ける、とある。
天気がいいので、さっそくその通りにしてみる。
ついでに甕と重しも洗って天日消毒する。

白菜を四つ割りにし、天日干し
甕と重しも天日消毒

夕方になって、漬け込む。
甕の容量が足りなさそうだが、強行する。

一段目を漬ける

塩を振り、体重をかけて押し込む。
最後に去年の赤唐辛子と刻み昆布を載せる。
蓋をして重しを載せる。

二段目を漬けこむ。容量一杯!

水があふれそうなので、大きな鍋を水受けとし、重しをもう一つ載せておく。

果たして2,3日後の状況やいかに?

信州ソウルフード放浪記VOL.23 むしり

今年の7月のこと。
佐久地方で有名な「むしり」を食べた。

むしりとは何か?鶏の半身を焼いたものだ。
焼き方に特色があり、ふんわりカリッと焼けていて、身をむしりながら食べるのだ。

このむしりは佐久の中込地区の食堂で売られている。

佐久市中込にある食堂瀬川

行って見ると目指す食堂・瀬川はあった。
電話をかけて予約してある。

時間前だが店をのぞいてみる。
中にはテーブルが一つ。カウンター内にはお姉さんが一人。
声をかけると、中では待てないので車で待て、とのこと。
店内での飲食、待合の禁止はコロナのせいなのかどうかはわからない。

予約受け取り専門

予約時間が来て、改めて店に入りむしりを受け取る。
熱々のものが新聞紙にくるまれて手渡される。
半身で1000円ほど。

むしりは新聞紙にくるまれ、包装紙をかけて手渡される

帰ってから包みを開け食べてみる。
なるほど、外側パリっの中ふんわりでむしりながら食べるのがうまい。
クリスマスなどにローストチキンを買って食べることがあるが、同じような焼け具合だ。

しょうゆ味のタレで焼かれた「むしり」

また一つ信州のローカルフードを知ってしまった。

キューリの粕漬

塩漬けのキューリが直売所に出ていたので買っておきました。
上田の岡崎酒造に酒かすが出ていたのでこれも買っておきました。

10月に入ったある日、思い立ってキューリの粕漬を漬けてみました。

買っておいてひと夏越したキューリの塩漬け、冷蔵保存でまったく劣化していません。

さっそく塩出しです。
水に半日漬けてみますが、キューリの塩っ辛さは全く抜けていません。
一晩塩抜きすることにします。

塩漬けキューリの塩出し

ある年、自分でキューリとナスの塩漬けを作ってみたことがあります。
しばらくたって樽を開けてみると、キューリの果肉が崩れていました。

夏野菜の塩漬けはなるべく早くに野菜の水分を抜くのが肝心です。
多めの塩と重い重しで2度漬けするのがいいようです。

直売所で入手したキューリは思いっきり塩辛く漬かっておりました。

一晩塩出ししたキューリ

一晩塩出ししたキューリを粕に漬けます。

岡崎酒造謹製の酒かす

粕に砂糖を混ぜて滑らかにしてゆきます。
砂糖の分量は粕の半分ほどです。
レシピには塩も混ぜるとありますが、キューリがしょっぱいので小さじ1杯程度にします。
砂糖にはザラメを混ぜます。

板粕に砂糖を混ぜる

岡崎酒造の板粕、いつだか、買い求めたとき、先代の同酒造おかみさんに「酒粕何に使うの?」と聞かれ、粕漬用にと答えると、「もったいない、漬物にはもっと安いやつでよい。これはかす汁とか甘酒に使って」と指導をうけたっけ。
おかみさんごめん、やっぱり粕漬に使わせてもらうわ!

粕が滑らかになり、いよいよ漬け込みます。
洗って乾かしておいた甕を用意します。

板粕を練ってゆく
砂糖と混じって滑らかなつやが出る酒かす

甕の底と、最後のキューリの表面に粕が残ることを意識し、またキューリとキューリの間に粕をサンドイッチすることを意識します。

甕にキューリを漬け始める
キューリを漬け終える

ラップで密封し、布巾で口を閉めて冷暗所に保管です。

いつ食べられることやら。

蓋をして保存

ドライプルーン

9月下旬の信州。
出盛りの果物は、ナシ、リンゴ、ブドウだが、まだまだイチヂクだったり、プルーン、モモもあったりする。
夏の果物の最後は完熟でしかも安い。
直売所に一袋250円のプルーンがあったので即ゲット。

いつもはジャムにするプルーンだが、今年はプルーン、プラムは結構な量をジャムにした。
ジャム以外の加工方法はないものか?

そうだ、乾燥という方法がある。
干し柿、干芋は毎年作っている。
ドライプルーンにチャレンジしてみよう!

事前にネット情報をチェックする。
砂糖をまぶし、水気を引き出しつつ、グリルや炊飯器を使って乾燥(半乾燥)させる、という方法が主流のようだ。

確かに、天日乾燥など、時間もかかるし晴天が続くとは限らない。

干し柿作りには半月かかる。
切り干し大根には、夏の晴天日数で3,4日かかる。
水気たっぷりのプルーンを天日だけを頼りに、腐らせずに乾燥させるのは日本ではむづかしい。

とはいえ、砂糖を使っての即席乾燥はどうなのか?
せっかくだから標高1400メートルの強烈な紫外線を利用したい。

そこで日中は天日に干し、夜はストーブを使って乾燥させる作戦にした。

プルーンを半分に割り、種を出す。
完熟したプルーンは種も取りやすい。
小さな実は、完全に二つ割りにせず、開いた形にしておく。

35度の焼酎を殺菌で噴霧してからお日様のもとへ。

35度の焼酎を噴霧

早速、小型スズメバチが網の隙間から入り込みザルの上でプルーンにたかっている。
果物の熟れた、発酵した匂いは強烈に昆虫たちにアピールするようだ。
このスズメバチをどうしよう?

放っておくと夕方には元気なスズメバチも座り込んだりしている。
そこで、弱ったスズメバチを割りばしで挟んでつまみ出した。
熱射地獄から半日ぶりに外に出されたスズメバチはのろのろと歩くだけ。
難なく踏みつぶすことができた。
害虫2匹を捕獲の上、殺処分。

編み付きザルで天日干し

夜はストーブの熱を利用。

金属製のざるにプルーンを広げ、アルミ箔を敷いたストーブに乗せて一晩。
焦げないが乾燥も甘い。

翌日は天日乾燥の後、フライパンにアルミ箔を敷き、プルーンを乗せてみる。
水分とともに糖分が抜け、焦げる。
プルーン本体が焦げなかったのが幸い。

かなりドライになってきた。

2日目の天日干し
フライパンを使ってストーブで乾燥

繰り返すこと3日。
ほぼできた。
冷蔵庫保存では長期間保存の自信がないので、冷凍庫保存にしようと思う。

出来上がり

余談

ドライフルーツで思い出すのが、おじさん26歳の時に放浪した南アジアの国。
特にパキスタンからイラン、トルコにかけて、市場に行くと荷台に山盛りのドライフルーツが売られていた。

品目はナツメヤシやアンズ、ブドウなど。
時には藁や砂が混じったまま乾燥しているワイルドな果物は、旅の途中の栄養補給にぴったりだった。
あの辺の国々、スイカやメロンの甘さも絶品だが、携行性、保存性という点ではドライがダントツだった。

パキスタン北部のギルギット。
インダス川上流の轟々たる川音を聞きながら、宿の部屋で、大きめの一袋、乾燥アンズをひたすら食べ続けたことを思い出す。
思えばあのころからドライフルーツのファンになったのかもしれない。