信州ソウルフード放浪記VOL,29 鯉の甘露煮自作

川魚は歴史的に信州地方の貴重なたんぱく源の一つ。
その昔は、鰻、アユ、ウグイなどの天然魚が、近年になってからも鯉、鮒などの養殖魚が食べられてきました。

昆虫食ではイナゴ、ザザ虫、ハチの子などが食べられてきました。
(コオロギを食べるという習慣は聞いたことがありません)。

地元のスーパーの鮮魚売り場には、鯉の切り身、ニジマスの一本ものなどが常時売られており、季節によっては小鮒の丸ごとなども並びます。
鯉料理、川魚の炭火焼きなどは郷土料理として出されます。

スーパーに行くたびに鯉のぶつ切りなどを見て地元らしさを感じていた山小舎おじさん。
値段がことのほか高いなあ、とも思っていました。
ある日、鯉のぶつ切りが30%引きになって売られているのを見て、思い切って買ってみました。

レシピで甘露煮の作り方を検索し、挑戦しました。

まず、切身に熱湯をかけ臭みを撮ります。
その間に煮汁をひと煮立ちさせておきます。

切り身を煮汁に放り込みます。
鍋を廻しながら、アルミで落し蓋をしてストーブにかけます。

煮汁にとろみが出て、切身に煮汁が染み込んでくるまで煮詰めます。

試食。
まず身はふわっとして上等です。
骨が硬いので要注意です。
皮も厚めでしっかりしています。

食べるところはそんなに多くはないのですが味は思ったより良く、川魚の煮魚としては上等なのではないでしょうか。

信州ソウルフード放浪記 VOL.28 富士見駅の立蕎麦

五月晴れの日。
用事があって富士見町へ行きました。
昼になったので用事の前に食事をとりました。

JR中央本線の富士見駅前はロータリーになっており、観光案内所をはじめ食堂などがあります。
駅舎の一角に立食い蕎麦もあります。
かねがね一度寄ってみたいと思っていました。

富士見駅入り口
駅舎にある立食い蕎麦

ところがGWが始まったこの日、立ち蕎麦店の窓口には「準備中」の看板がありました。
念のために暖簾をのぞき込んで聞いてみました。

係は40代くらいの女性が一人でした。
「準備したツユがなくなって・・・。」と女性。
「GWで、思ったよりお客さんが多かったのか?」と山小舎おじさん。

すると女性がツユの鍋の蓋を開けて「一人分だったらできるかな」とのこと。
慌てて、「発売停止」の看板がかかる自販機でてんぷら蕎麦の食券を購入しました。

この日は昼間にして「準備中」の看板が

てんぷらは出来合いのものでしたが、蕎麦そのものは信州らしく美味しかったです。

係の女性の好意でてんぷら蕎麦にありつく

それにしても、こういった柔軟といいうか、人間的というか、アナログそのものの対応に時々接することがあるのが田舎暮らしの醍醐味でしょうか。
その間にも続々訪れる来客に謝りつつ、女性は新しいツユを沸かす準備に追われていました。
どうもありがとう!

今どき富士見町の規模の駅で立食い蕎麦店は珍しいのではないでしょうか。
そのサービスぶりも含めて。

信州ソウルフード放浪記VOL,27  中野食堂のラーメンセット

中野食堂という上田の塩田平にあるローカル食堂でラーメンセットを食べてきました。

上田市の食べログを見ると出てくる中野食堂。
上田電鉄別所線の中野駅近くの住宅地にあります。

中野駅は、信州二の宮・生島足島神社の最寄り駅・下之郷から別所温泉方面に、3駅ほど行った駅です。

塩田平は、旧東山道沿いの古くから開けた地域。
広がる田園地帯には、駅に沿って集落、宅地が点在しています。
単線私鉄の別所線が塩田平を上田市街地につなげています。

中野食堂。向こうに見えるのが別所線の踏切

日曜の昼。
朝ご飯を抜いて目指す中野食堂に入店しました。
案に相違し店内に客の姿はありません。

愛想のよい若いおかみさんにオーダーします。
メニューは定食系、丼物、カレー、麺類など。
食堂の王道を行くものです。
今回頼んだのはラーメンとカツ丼のセットです。

「営業中」の看板に一安心、暖簾をくぐる

食べてみると、ラーメンは昔ながらの安心する味。
カツ丼も味はいいのですが、小どんぶりといえ、ご飯の量の多いこと。
チェーン店の富士そばと比べると、小カツ丼のご飯が優に倍、いや3倍近くはあるのではないでしょうか。

ラーメン、カツ丼(小)セット。ボリューミー!

コンデイションを整えてきたにもかかわらず、最後は食べきるのがやっと。
食が細くなってきたのでしょうか。

食べているうちに2組の中高年夫婦が入店。
見るともなく見ると、それぞれ単品のカツ丼やラーメンを注文していました。
なるほど。

若めのスタッフで地域で頑張っている中野食堂でした。

信州ソウルフード放浪記VOL.26 上諏訪・まとい食堂のアベック丼

上諏訪の商店街から少し外れた住宅街に食堂まといがあります。
本ブログでも一度紹介しました。

コロナで休業だった時期もありましたが、最近は平常営業中の様子。
ボリューミーな揚げ物定食が忘れられず、再び訪れました。

雨模様の平日。
12時を前に店の前へ。

駐車場が満車なので並んでいる常連さんと思しき作業上着姿の4人連れに聞いてみると、お寺の駐車場のも駐車可能とのこと。
そちらへ軽トラを入れて、店の前で順番待ちをします。

まとい食堂入り口。県内ルールの14時から昼休み、には注意。

4人連れはメニューを見ながら待っています。
品定めが終わった頃を見計らい、メニューを廻してもらいながら、おすすめを聞きました。

「アベック丼が人気ですね。ソースカツとエビフライが乗っています。」との返事をいただきました。

15分くらい待って入店。
その間にも新たなお客さんが並びます。

おすすめのアベック丼を頼みます。
ホールを仕切るのはかつての高齢のおばさんではなく、30代くらいの明るいお姉さんでした。

味、ボリューム、値段共に文句なし!アベック丼

出てきたアベック丼は期待以上。
1000円でこのパフォーマンスはなかなかありません。
分厚いカツが3枚に、ぷりぷりのエビフライがどんぶりご飯の上に乗っています。
朝飯抜きで準備してきた山小舎おじさんですが、食べ終わると満腹。
味噌汁が熱々なのもグッドでした。

フライ、焼き肉の定食、麺類、丼物、カレーなど、われわれが食堂に期待する全メニューを網羅し、そのどれもが満足のゆく味とボリュームのまとい食堂。
また来ましょう。

信州ソウルフード放浪記VOL.25 下諏訪・林家の鰻

信州では鰻が昔からの御馳走とのこと。

4月のある日、家族が毎月恒例の山小舎訪問に訪れました。
家族の来訪時には、山小舎での炭火焼きのほか、外出先での信州名物料理を食べるのが楽しみの一つです。

鰻は諏訪地方の名物の一つで、家族らとはこれまでも、岡谷、上諏訪、下諏訪の鰻屋によく行きました。
今回は下諏訪町にある林家というところへ行きました。

店へ着くと先客が一組待っていました。
30分ほど待って入店。
2階のテーブル席へ案内されました。

待っている間の店内風景
玄関のレイアウト

鰻重をいただきました。
諏訪地域の鰻は、関東風の柔らかい焼き方と、関西風のパリッとして甘辛い焼き方の二通りがあります。
岡谷を中心にした関西風の外カリ、中フワの甘辛い鰻も美味しいのですが、下諏訪の林家の鰻は関西風ではなく、一度蒸してから焼く関東風でした。

林家の鰻重

ごはんが美味しく、量的にも満足なのが信州スタイル。
肝吸いや漬物も一味違います。

いつものように大満足の信州の鰻でした

煮豚

週末の家族の来訪を待つ山小舎おじさん。
家族に人気のごちそう、煮豚を作ることにしました。

茅野のAコープ・ピアみどりで信州豚のバラブロックを買ってきます。

Aコープの信州豚は焼いてよし、煮てよしの優れもの。
炭火で焼くと肉の歯ごたえがちょうどよく、油の甘さがたまりません。
煮ると下茹でがいらないくらいにアクが少なく煮汁に濁りが出ません。
山小舎で作るカレーはもっぱら信州豚のコマ切れです。
値段も高くありません。

豚バラブロックを水から煮ます。
来客用なので一応下茹でします。

下茹で開始

茹でこぼした後、水を取替て煮込み始めます。
長ネギ、ショーガに玉ねぎ、にんじんを臭み取りに入れることにします。
酒、黒コショーを加えます。

2、3時間、薪ストーブで煮たら1日目終了。
ここで一晩おき、固まった油を除きます。

茹で上がって味付けを待つ。黄金色のスープ

翌日再びストーブで煮込みながら味付けします。
砂糖、しょうゆ、みりんに自家製チャツネ、隠し味の味噌、塩麴などを加えてさらに煮込みます。

段々いい色になってきます。
汁が煮詰まらないようにします。
ここで茹で卵を入れて煮卵にします。

卵に色がついたら出来上がり。
冷やして油を取り除きつつ、来客への提供を待ちます。

味付け1日目
煮詰まってきたころに茹で卵を投入

信州ソウルフード放浪記VOL.25 上田・刀屋の蕎麦

上田にいつも人が並んでいる蕎麦屋がある。
刀屋といってたいていの観光ガイドには載っている。

小説家で「真田太閤記」を書いた池波正太郎が、上田にひいきの飲食店が何か所かあったそうで、刀屋もそのうちの1軒だったとのことだ。

山小舎おじさん、久しぶりに刀屋へ行ってみた。
前に5人連れの家族が並んでいた。
ややあって案内された。

前回来た数年前に、てんぷら付きのざる蕎麦普通盛を頼んで、腹いっぱいだった記憶があった。
改めて注文を取りに来た女性に聞くと「小盛が東京でいうザル1盛分、中もりが2盛分」とのこと。
もり蕎麦中盛を頼む。

一口すすって記憶がよみがえった。
太く、硬い蕎麦だ。
うどんのようなフォルムでもある。
よくかみしめると蕎麦の香りがする。
中盛で腹いっぱいになる。

愛想はないが、かみしめると味があり、腹いっぱいにしてくれる。
まるで信州人のキャラのような蕎麦ではないか!

たくあん漬け込み

12月になり山小舎周辺の寒さは本格化しています。

たくあん用に買った干し大根を追い干ししていますが、大根が凍っています。
それでも寒風にさらされた大根が細くシワシワに乾いてきました。
山小舎仕舞が近づいたある日、沢庵を漬けました。

半分凍り、雪にまぶされた大根を取り入れます。

ネットで調べて塩、ぬか、ザラメの分量を量ります。
その前に大根の重さを1本ずつ量ります。

大根は4キロありました。
塩が200グラム、ぬかが800グラム、ザラメが160グラムの計算になります。

それぞれを量って混ぜておきます。

樽の底に混ぜた糠等を敷きます。
大根を隙間の内容に並べて、その上に糠等を被せます。

大根が3段ほどになりました。
大根が見えなくなるほど糠等を被せ、最後に塩を一握りふります。
蓋をして重しを載せます・・・。あつ、樽の内側に漬物用のビニール袋をセットして大根を入れる予定でした!
ビニールを使うのを忘れてました!

やむなく水漏れ防止に樽の外側にビニールを被せることにします。
重しを17キロほど載せます。
水が上がってくるかどうかが勝負です。
水が上がってくれば、1月中にも食べられるのではないでしょうか。

菊芋の味噌漬け

菊芋がたくさん採れました。
体に良い食べ物ですが、食味はよくありません。
食べ方もあまり知りません。

収穫の一部を味噌漬けにすることにしました。

調べると下漬けした後に、味噌で本漬けするとのこと。

まず菊芋の泥を落としました。

菊芋はショウガをさらに複雑にしたような形をしています。
泥が溜まりやすく、また落としにくい形状です。

まずは菊芋を水につけてしばらく置きます。
水を取り替えると泥が流れ去ります。
そのうえで、球根の間に残った泥を掻き出します。

この後、塩水につけて下漬けします。
塩をふってつけてもいいのですが、それだと1か月以上かかるので塩水にします。
重しを乗せて1週間ほど置きます。

1週間後の菊芋です。
心なしかしぼんだ感じがしますが、思ったよりしゃっきりしています。

塩水から上げ、軽く水洗いしてザルにあげます。

漬物用味噌を用意します。

これを甕の底に塗り、菊芋を敷き詰めてゆきます。
3段ほど菊芋と味噌のサンドイッチを甕に仕込みました。

クッキングシートで密閉し、重しを乗せて保存します。
1か月後、どんな味になって入でしょうか。

信州ソウルフード放浪記VOL,24 あさつゆ・くるみ亭の手打ちうどん

上田市丸子地区に直売所あさつゆがあります。
地域の野菜や加工品が手ごろな価格で集まる直売所です。

山小舎おじさんは、近くのスーパーマーケット・ツルヤで食材を買うついでなどによく寄ります。
野菜や卵のほか、季節の果物などを、時には箱買いし、ジャムやコンポートなどに加工するのが楽しみです。

あさつゆの駐車場に立つ看板。背後に初冬の浅間連峰が見える

丸子地区は、わが長和町に接しており、かつては小県郡に属する丸子町でした。
戦前は製糸業で栄え、現在は別所線だけが残る上田電鉄の支線が町まちと上田をつなげていました。

シナノ絹糸という繊維製造会社が今でも残っています。
また、山小舎おじさんが小学生くらいの時に、県立丸子実業高校(現丸子修学館高校)が夏の甲子園に出場したことがあります。

この丸子地区にある直売所あさつゆには食堂くるみ亭が併設されています。
この日、昼食をくるみ亭で摂ることに決め、あさつゆを訪れました。

あさつゆの入り口

手打ちうどんと書かれた暖簾がかかり、土日の昼間は地元の客で満員になり、うどんが売り切れることもしばしばのくるみ亭。
山小舎おじさんは何度かここで肉うどんを食べたことがあります。
手打ち独特の透明感と弾力を持ったうどんでした。

町の食堂で食べる醍醐味は、手作りの味を味わうことにあると思います。
だんだんとそういった食堂が少なくなっているような気もします。
その点、くるみ亭は手作り感満点の地元のお母さんたちによる食堂です。

入って右手に食堂くるみ亭の暖簾がかかる

この日も肉うどんをチョイス。
たまには別のメニューをとも思いましたが、あの味をもう一度という気持ちが勝りました。

寒い平日ということもあったのか、店内はほどほどの入り。
混雑を気にせず食べられます。

券売機などはなく、カウンター越しにお母さんに口頭で注文し、その場で支払って、紙のチケットを受け取ります。「○○番の肉うどん」と呼ばれるのを待って受け取りに行きます。

この手作り感、アナログ感が安心を誘います。
手打ちうどんを食べる前段としてこれ以上ない、レトロでコミュニケーション感にあふれた舞台設定です。

肉うどんはいつもと変わらない味でした。
値段も量も味も依然と全く変わりません。
長野県民の県民性(頑固さ、頑迷さ、まじめさ)がいい意味で発揮されています。

肉うどん。500円。イチオシのメニュー

食後に直売所で買い物。
切り干し用の大根、干芋用のサツマイモ、地元のごぼう、自分で食べるリンゴなど。
いつもながらの満足するラインナップがそろいました。

この日のお買い物。買いごたえ感タップリ