「マル農の人」

「マル農の人」という本を読んで、「垂直仕立て栽培」という農法を知った。

きっかけは本屋に行ってこの本を手に取ったから。
金井真紀という著者の本が2冊新刊コーナーに並んでおり、となりの「パリのすてきなおじさん」という本のほうが売れていた。

この本のテーマは、道法正徳という1953年生まれのおじさんが伝道する、「垂直仕立て栽培」農法とそれにまつわる物語。

金井著者は、伝道師・道法の個性的キャラクターとその経歴にひかれて取材を始め、道法の農法に影響を受けた人々にまで取材の範囲を広げて本にしている。

瀬戸内海のミカン農家に生まれ、農協の技術指導員を経て、独自の農法の伝道師となった道法。
金井著者の本では、農協組織の一員として決して伝統農法には逆らえない宿命を背負う立場の道法が、独自に編み出した「垂直仕立て栽培」農法を世に問い、その個性を花開かせてゆく過程に力点が置かれている。

ミカン栽培で研究を重ね、従来の指導方法とは異なる「垂直仕立て栽培」で指導結果を上げ、評判になるが、農協の指導方針と合わなかったため不遇を強いられる時代の話は、金井著者の一つのテーマである組織論につながる。

「余計なことをしたら評価が下がる」
「何かを変えることは前任者の否定につながってしまう」
「皆の足並みを乱すことが最大の罪」
伝道師・道法による組織論を、金井著者は聞き逃さない。

山小舎おじさん的には、この本、金井著者の女性らしい柔らかで自由な人間味あふれる切り口に惹かれ入手した。
が、一番気になったのが、「垂直仕立て栽培」農法事態に関する興味で、その農法が、金もかからず、専門的な技術もいらないものである点だった。

「垂直仕立て栽培」のマニュアル本も出ていた

金と手間をかけ、農協が指導する通りに営農すれば、結果が得られるのが、職業としての農業だろう。
高額な耕運機などをそろえ、ビニールハウスなどに設備投資し、肥料・農薬を大量に購入し、たっぷり時間をかけて営農する、のがプロの農家の姿。

ただしそれらは、素人にはいちいち程遠い世界。

その点、「垂直仕立て栽培」では、植物の成長を決定する「植物ホルモン」を活性化させるので、肥料、農薬がいらなくなる!
また、ビニールマルチなどの軽資材は適宜使用するも、基本は不耕起(耕運機等は不要)で石ころもそのままにしておく(過度の手間不要)の農法!

これはまるで全国の素人農家、畑愛好家への福音ではないか。

マニュアル本の1ページ

「わら1本の革命」こと自然農法の福岡正信、「奇跡のリンゴ」こと無農薬リンゴの木村秋則。
エコロジー派が信奉する、これら偉大な先達の境地は彼らが天才だからこそのもの。
「木村さんのやり方は普及できない、一代限りの名人芸みたいなもの」(「マル農の人」117ページ)なのだ。

その点、伝道師・道法の「垂直仕立て栽培」農法や、三浦伸章の「ガッテン農法」は、誰にでも安価でできそうな方法を具体的に提示してくれている。
二つの農法に共通するのは、無理なく最大限の収穫に至る道を具体的に指示しており、主義としての自然農法、エコロジーとは違う実用的なものだという点。

といってもこれまでの常識からすると多分に「スピリチュアル」な傾向もある。
特に「ガッテン農法」での、ネジネジ藁など・・・。

これについては、「常識」と「非常識」の境がなくなってきて自由な発想が許されてきたものと解釈し、結果を持たらすものは大いに取り入れようと思う。

畑の石ころについても素人にはありがたい解説が

こういう時代を迎え、わくわくする気持ちを抑えきれない。
道は開けつつある。

今年は、例年の「えひめAI」散布にプラスして、「ガッテン」と「垂直栽培」でがっちりいきたいものだ。

畑仕舞い

令和2年の畑の仕事納めをしました。
今年は12月中旬まで山小舎に居ます。
朝夕はストーブをガンガン焚かないと寒くていられません。

12月の畑とその周りの風景

ガッテン農法を試そうと思い、農法に則った畝立てをしています。
12列の畝が完成しました。ススキや糠、落ち葉、燻炭などを用意しなければいけないガッテン式畝立ては想像通りに大変ではありました。
粘土層が出るまで幅50センチで掘ってゆきます。
石が出てこなく、掘りやすい状態でも、1列につきスコップで4往復程します。

この穴掘りと、すでに掘ってある穴に、ススキなどの資材を入れて土をかぶせる作業を1列ずつワンセットやるので1日精いっぱいでした。

時間にすれば2時間ほどの作業ですがヘトヘトでした。
日差しがよければ、ヤッケを脱ぎ、もう1枚脱いで、袖まくりでやりましたが。日差しがないとヤッケも脱げない寒さです。

深さ30センチほどの粘土層まで掘り、砕く
ススキなどの資材を投入する
埋め戻して畝にする

延べ2週間にも及ぶ作業でした。
山小舎おじさんにもまだ情熱が残っているのだなあと、実感せざるを得ないことでした。

12列のガッテン式畝が完成

5枚借りている畑のうちの1枚のみですが、12列の畝ができました。
余ったススキを畝にかけて養生しました。

ススキで畝と畔を養生する

最後にガッテン農法の神髄であるネジネジを畑の隅に埋めました。

磁石で方角を図り穴を掘る
マニュアル通りにねじった藁とススキの茎を方角に合わせて配置
埋める

果たして来年の畑はどうなっているでしょう。
どう転んでも悪くはならないだろうと思われる今日この頃です。

畑仕舞いしてフェンスを閉める。来年までさようなら

ガッテン農法 ネジネジの教えを乞いに

ガッテン農法シリーズです。
最近の山小舎おじさんの畑関係の活動は、ガッテン式の畝立てと、ネジネジづくりが主な内容になっています。

ネジネジを作って、畑の隅っこや、山小舎の玄関、軽トラの運転席に置いています。

ところがある日、ネジネジ関係の動画を観ていて、これまでの作り方が間違っているのでは?との疑問が沸き起こりました。
ねじり方の向きが逆だったのでは?という疑問です。

そこで、ネジネジ実習会の講師を務めた、富士見町在住のN氏にメールで確認しましたが理解に至りません。

気になりっぱなしのネジネジ問題を解決したくて、富士見町のN氏を訪ねて再度、教えを乞うことにしました。

当日の天気は快晴。
富士見町までのルートは八ヶ岳を望むロケーション。

茅野、原村、富士見町と過ぎるにつれ、角度を変える八ヶ岳の姿。
その圧倒的な存在感は、地域にパワーをもたらす源泉が八ヶ岳にあることを余すことなく伝えている。

茅野から見る八ヶ岳連峰

携帯のナビ通りに軽トラを走らせると、N氏の農園にたどり着いた。
八ヶ岳山麓まで見渡す限りの高原の畑の中に点々とする集落。

その集落の中に住み、定住7年目というN氏。
奥さんともどもガッテン農法を実践し、収穫物は直売所などに出荷しているとのこと。
農閑期の現在は、八ヶ岳連峰の権現岳、編笠山にも登り、山頂にネジネジを置いてきたとのこと。

富士見町のN氏農園から見る八ヶ岳連峰

玉ねぎの世話で忙しいN氏に詫びながら、農園のビニールハウスで、山小舎おじさんの疑問に教えを乞う。

改めて疑問への解答をいただくとともに、イラストで分かりやすく書かれたマニュアルをコピーさせてもらう。

N氏の農園のビニールハウスで教えを乞う
デモ用にN氏が作成してある本式ネジネジ
コピーをいただいたマニュアルの1枚

まずは疑問点を解決できた山小舎おじさん。
正しいネジネジを作り直して、農作業や生活を助けてもらいたい、と思った次第。

ゆくゆくはガッテン農法先輩のN氏のように、ますます活動的な田舎暮らしを送りたいと思いました。

ガッテン農法畝づくりの実践 その3

ガッテン農法にはまっています。
畑に行くたびに畝を掘り、資材を投入して畝立てをしています。
今回はガッテン農法の畝づくりに必要な資材の調達についてレポートします。

枯れすすきを調達

ガッテン農法で大量に必要なのがススキ。
今はススキがシーズンではあるのですが、いかに田舎暮らしの山小舎おじさんといえども、大量のススキを調達するのはひと手間です。

7メートルほどの畝を立てる場合、ススキが一抱え程は必要になります。
数株から10株ほど固まって生えているススキを5回ほど刈って、一抱え程になります。

大門街道沿いのススキの群落。茎の堅い立派なススキが採れる

山小舎から畑の間でススキの群落を探します。
道から近く、軽トラが駐車できる場所、明らかな敷地内ではないこと、が条件です。
ススキは道端にいくらでも生えてはいますが、条件に合う群落となるとそうはありません。

別荘地近くの空き地のススキ。細い茎だが大量にとれる

が、やはり山道。
人に迷惑が掛からないで刈れる場所はあります。

目星をつけた場所で、刃の付いた鎌で刈ってゆきます。
思わず、「俺は河原の枯れすすき・・・」のメロデイ-を心で口ずさみます。

紐で縛って軽トラに積み込みます。
紐で縛らないと走っているうちに風圧で飛んで行ってしまいます。

一抱えを縛って運ぶ。これで1畝とちょっとの量

落ち葉を調達

ガッテン農法では落ち葉も使います。
山小屋周辺に、ミズナラの落ち葉なら無限にあります。
が畑に持ってゆく荷姿に落ち葉を整えるのは、これもひと手間です。

熊手で落ち葉を集め米袋に詰める

熊手で集めて米袋に詰めますが、乾いた落ち葉は軽いものの、まとめるのが大変なので、霜や雨で湿った時を狙います。
7メートルの畝で1から2袋分の落ち葉が必要になります。

燻炭を調達

ガッテン農法の畝づくりでは燻炭を使います。
これは、もみ殻を焼いて自作します。

山小舎付属の炉です。
廃材から生ごみまで何でも燃やします。
これで燻炭を焼いています。

普段はごみ焚きに活躍する炉

まず、炉の中の灰や燃えカスを取り除きます。
種火をおこします。
燃えやすい端材などを使います。
簡単に消えてはまずいので、しっかり火をおこします。

種火はしっかりとまんべんなく燃やす

炉の空気取り入れ口を閉じます。
蒸し焼きにするので、空気が入れば完全燃焼し、灰になってしまいます。
もみ殻の灰はそれで利用価値があるのですが、今回の目的は燻炭化です。

自作の金属板も使って空気取り利口を封鎖

煙突を立てて、その周りにもみ殻を投入します。
しばらく、煙突から盛んに煙が出ます、炎が出るときもあります。

煙突の周りのもみ殻が焦げてゆきます。
燃え具合を見て、もみ殻を混ぜたり、煙突を外したりしながら炭化を待ちます。

翌朝にはもみ殻燻炭が出来上がっています。

種火の上に煙突を立て・・・
煙突が倒れないようにしながらもみ殻を入れてゆく
もみ殻は盛れるだけ盛っておく
翌日に焼きあがった燻炭。少々ごま塩だが・・・

ガッテン農法、畝づくり実践 その2

ガッテン農法で畝づくりをしています。

先に掘った2本の畝は、掘ると石だらけの場所でした。
それでも何とか2本作りました。

畝立てを完成させるには、資材的としてススキが大量に必要ですし、燻炭、酢水、落ち葉、ぬか、と用意するものが結構広範囲です。
何より耕盤層まで掘り起こすのに体力と時間がかかります。

それでも来年の成果が楽しみでやっています。

前回までに完成させた畝2本

今回は、3本目以降の畝として、これまで4年間、夏野菜を植えていた場所をガッテン流に立て直すことにしました。

4年間夏野菜を植えた畝はサクサクとスコップが入ってゆきました

現在の畝の幅、畝間の長さ、は偶然にもガッテン農法の教科書にあるサイズとほぼ同じでした。
したがって、4年間使った畝そのものを掘り起こし、資材を入れて埋めなおせばよく、畝切の計測は不要でした。

表土を20センチほど掘ったところ。ここまでは順調に進みました

いざ、畝にスコップを入れるとサクサク入ってゆき、ふんわりした黒土をどんどんすくってゆくことができました。
さすが、えひめAIの微生物効果!と感心していると、表土20センチから下は、だんだん石が出てきて、土も硬くなってゆきました。

深さ30センチほどで表出した耕盤層は、粘土質で固まっていました。
石だらけだった先の2畝と全く同じです。
表土はふかふかになっていましたが、耕盤層がふかふかになっているわけではありませんでした。

深さ30センチで現れた耕盤層は堅い粘土質でした

ウーム。
今まで耕盤層については見て見ぬふりをしてきました。
何せ、深く掘って耕盤層に手を入れることなど、力がいるし、時間もかかる、と避けていたのです。
管理機で耕耘し、えひめAIを表土に振りかけるだけでした。
ガッテン農法に出会わなかったら、ついぞ、耕盤層まで掘ったりなどしなかったでしょう。

ふかふかの表土のおかげで1日で2本掘れました

今回掘った畝は4年間のえひめAIの微生物作用によって表土がふかふかになっていたため、畝堀作業は前回の倍のスピードで進みました。
1日で掘り起こし1本。もう1日で資材投入。と、1本の畝立て完成に2日かかる見込みが、これからは倍のスピードで進むかもしれません。

耕盤層に手を入れる初の試み。
来年の成果が楽しみです。

遅ればせながらアスパラの枯れた茎を切りました
アスパラの木にカマキリの卵がついていました

ガッテン農法、畝づくりを実践

その講習会に参加し、ネジネジ藁の威力を体感させてもらっている山小舎おじさん。
ガッテン農法の本にある、畝立ての方法を実践してみました。

教科書その1、穴掘り

自然の力を最大限に引き出して野菜を作ることを目標とし、農薬、化学肥料を使わないガッテン農法。

というか、無農薬、無化学肥料が目的の農法ではなくて、野菜が育ちやすいように土を作り、手順を追って作ってゆくと、農薬、化学肥料は必要ない、というのがガッテン農法のキモのようだ。

教科書その2、耕盤層砕きと資材投入

ガッテン農法では、畝は1回だけ作ればいいという。
畝の場所を変えることも不要で、連作も可能と。
耕運機による耕耘も不要と。

教科書その3、資材投入と整地

いいことだらけなので、だまされたと思い、畝づくりを実践してみた。
時期的にはちょうどいい。
冬の間に畝を作って来春からガッテン農法の実験ができる。

まず、幅50センチ、深さは堅い耕盤層に当たるまで畝予定地を掘る。
これが大仕事で、長さ7メートルの畝を、深さ30センチに掘るのにたっぷり1時間半ほどかかった。

実戦その1、穴掘り。深さ30センチほど掘った

表土はサクサクしていたが、少し掘ると石が出てくる。
しかも大きい石がある。

ガッテン農法では石も土のミネラル供給源として排除していないが、通気性の良い畝のためには多すぎる石は排除しなければならない。
畝堀りは石との格闘だった。

石が出てくる。同様な石の山が3つで来た

どうしても掘り出せない石が2つ残った。
深さ30センチほど掘ったときに、粘土層が出現。
これを耕盤層と判断し、掘削をストップ。
久しぶりに汗だくの畑作業となった。

耕盤層と思われる粘土層が出現

次の日、いよいよ畝完成までの作業をした。

教科書通りの資材を用意する。
まずススキ。
結構大量に必要なので、採取場所を探していた。
大門街道沿いにススキの群生場所があったので、5群ほどを鎌で切って、大きな一抱え分を採取した。

燻炭は、山小舎にたくさんあるので持って行った。

資材を集めるその1、ススキと燻炭

落ち葉は山小舎の周辺で、ミズナラの落ち葉を米袋2つ採取。
枯れた葉っぱを袋に詰めてゆくのは結構面倒だ。

糠は畑の集落の精米所でもらってきた。

最後に、教科書では醸造酢の希釈液とあったが、勝手にえひめAIの希釈液を使うことにした。

資材を集めるその2、落ち葉と糠
資材を集めるその3、醸造酢ならぬ えひめAI

耕盤層にスコップを入れて砕いた後、手順に沿って、資材を畝に投入してゆく。
穴掘りと異なり、仕上げの作業は気持ちよい。
不慣れな作業で、この日も結局1時間半ほどかかったが。

あとは春の植付の時期まで自然に任せるだけ。
掘り返した土が生き生きと力強く見えたのは気のせいだろうか。

実戦その2、砕いた耕盤層の上に、えひめAIと燻炭を撒く
実戦その3、ススキを並べる
実戦その4、落ち葉と糠を投入、さらに燻炭を入れる
実戦その5、深いところの土から戻しいれる
実戦その6、かまぼこ型に畝を整地して終了

ここまで、畝1本を作るのに丸二日。
計3時間ほどの力作業。

畑全体をガッテン農法の畝とするまで一体何年かかることやら。
とりあえず、フェンス付きの畑だけでも来シーズンまでにはやっつけたいと予定を立てる山小舎おじさんでした。

ガッテン農法講習会に参加

茅野のAコープのレジ外の掲示板に「ガッテン農法講習会」というビラが貼ってあった。
5時間の講習で、参加費6,500円と微妙に高額なのが気になったが、参加を申し込んだ。

三浦講師の著書「ガッテン農法」

畑を作って4年が終わった。
必ずしも順調にいっているわけではない。
安定した収穫をもたらすべく、畑づくりのキモを学びたい。
鹿などの食害防止についても知恵を得たい、との気持ちだった。

11月上旬のある日。
茅野市湖東の民家が会場だった。
講師はMOA農業の指導員という三浦氏。
湖東地区は山小屋から大門街道で茅野に下りたあたりのまあ近場。

MOAとは世界救世教のことで、戦前の神道系新興宗教の大本教から分派した教団。

定員30名というが果たして何人集まるのか?
山小舎おじさん1人だったらマンツーマンでじっくり学べるな、と思いながら、30分ほどかけて会場へ行くと、どんどん人が集まってくるではないか。
なんと遠くは岐阜県や横浜からも来ている。
女性が多く、参加者通しの知り合いも多いようだった。
三浦講師はこの世界では有名らしかった。

会場は湖東地区の移住者が住む民家だった

午前中は座学。
午後から実習の1日だった。

座学では、講師の三浦さんの経験に基づいた、土の話、植物の話、土(地球、自然)と植物の関係の話。

座学では絵を使って説明がされた

聞いていて、三浦さんが豊富な経験に基づいた農業者であることがわかる。
また、ただの農業者ではなく、その人ならではの世界に突入した稀有な人であるとわかる。

会ったことはないが、「奇跡のリンゴ」で有名になった木村秋則さんももこういう人なのではないか、と思った。
あるいは、マスコミ的には無名なままだが、各地、各時代に存在した、単なる篤農家を越える、名人と呼ばれる人はこういう感じなのかな、とも思った。

一般常識とされるものを突き抜けた世界に到達した人の境地は、一般民には理解不能で、マネしても結果を得られないもの。
我々が無農薬リンゴを作ろうとしてもできないし、不耕起・無肥料で野菜を作ろうとしても、自然農法の泰斗・福岡正信さんのようにはいかない。

とはいえ、先人、名人が到達した世界を想像、追体験し、少しでも自然の本当の姿を理解することによって、畑の世界を運営できるのであれば、是非そうしたい。

弁当持参だったが、サラダとスープ、玄米おにぎりが出た

午後からの実習は、稲わらを持って畑に出た。
なんでも三浦講師が2年ほど前にひらめいた、ネジネジ農法の実地講習だ。

土の団粒構造の実現、作土の下の耕盤層の解体、を日々考える中で考え付いたものだというネジネジ。
藁をねじって、それをねじり合わせて結んだもの。
これを畑に置くだけで、土は柔らかくなるという。

会場に展示されたネジネジの数々

藁で作ったネジネジを石を入れたバケツに置いて軽さを実感してみたり、胸に当てて深呼吸してみたりした。
なるほど、軽く感じるし、呼吸が軽くなるような気がする。

畑で実習

それから、ネジネジづくりの実習。
教えてもらいながら作ったネジネジはなぜか大切なものに思えて持って帰って山小舎の玄関に飾った。

それから、体がよく動くようになったのは気のせいだろうか。
何よりも、4年目の矢籠や生活に入り、体を動かすのが億劫だったのが、前向きな気持ちになったし、力仕事がはかどるようになった。

山小舎おじさん自作のネジネジ

山小舎おじさんもガッテン農法の信者になったのか?

玉ねぎを定植  ネットも張った

今年も11月。
来年の収穫に向けて玉ねぎの苗を定植しました。

鹿の通り道の畑と、フェンス付きの畑に分散して植えました。
計300本。

苦土石灰ともみ殻を撒いて畝立てし、えひめAIと鉄茶を撒いてからマルチングしました。
ポールで穴をあけた中に置くように苗を植えてゆきました。

玉ねぎの苗は定植前にえひめAIの希釈液に浸しておく
穴あきマルチを敷いてゆく
定植後の苗

鹿の通り道の畑には、玉ねぎの畝の周りにネットを張りました。
高さ2メートルのネットを10メートル分、農協で買ってきました。
2メートル40センチの支柱も5本買いました。

四つ角に支柱を立て、ネットを張ってゆきました。
ネットがたわまないように、5か所ほども支柱に結んでゆきました。
が、どうしてもネット自体の重さや、支柱の立て方の弱さなどにより、若干ネットはたわみます。
補強のために短めの支柱を追加で立てました。

まず四隅に支柱を立てる
支柱に結わえながらネットを巡らせてゆく

畝を2本囲うと、ネットの長さが10メートルでは足りなかったので、5メートル分買い足して囲いを閉じました。
囲いの中への出入り口の設定がまた一工夫必要でした。

開閉口も設定して囲いが完了。果たして来春まで持つか

そしてこの畑、2年目の終わりにして気が付いたのですが、10月を過ぎると日当たりが悪くなり、午前中しか日が足らなないのです。
もともと山陰の畑で、夏でも場所によっては日陰になることはわかっていたのですが・・・。

去年の玉ねぎの生育の遅さの理由がわかりました。
真冬の頃は一日中直射日光なしの中での生育となりましょう。

といってもほかに場所がないので、去年と同じ、それでも一番日当たりがいい場所に畝を立てましたが。

今年の作付けはこれで終了です。

畑の作業自体も、ヤーコン、里芋、長ネギ、大根などを収穫し終えたら、資材の撤去、ごみもやし、もみ殻投入、耕耘、して仕事仕舞いです。

ヤーコン、里芋を収穫 秋の空

10月下旬、ヤーコンと里芋を掘ってみました。

ヤーコンは株丈が思いっきり伸びています。
気持ちいいというか、猛々しいほどの勢いです。

掘り起こします。
粘土質の畑に食い込んだ芋は、掘り出すたびにぽきぽき折れます。
また、四方の土中に伸びた芋が、三又鍬の刃に当たって切れまくります。
サツマイモなどに比して柔らかなヤーコンの芋です。

鍬を入れてヤーコンの株を起こしてみたところ

とはいえこれほどの豊作は初めて。
全体の3分の1ほどの株を掘って、芋がコンテナの半分ほど採れました。
頑張った今年のヤーコンの株と、育んでくれた畑に感謝です。

思ったより豊作でした。割れた芋が目立ちます

茎も持って帰ります。
いちいち重く、固い茎と葉で、根の泥を払い、束ねるのが一仕事です。

持って帰った葉を乾燥させればヤーコン茶になります、が苦いのでほとんど自分では飲みませんので、今年はやめます。
その代わり、山小舎前の花壇や、ブルーベリーの根元に葉をつけたままの茎を置いてみます。
鹿よけになるのかどうか。

軽トラの荷台半分ほどを占めるヤーコンの茎と葉

収穫したヤーコンは家族が来た時にお土産でたっぷり持たせます。
スムージーの材料にぴったりなのです。

また、折れた芋は千切りにして生で食べます。
ほんのりと甘く、良質な糖質を持つスーパー食材です。

ショウガも一株掘ってみました

里芋は今年は不作。
日当たりの悪さと長雨が最後までたたりました。

掘り起こしてみると子芋は小型のままです。
人にあげられるような芋はできませんでした。

今年の里芋は親芋の周りにほとんど子芋がついていませんでした

親芋というのか、茎の根元のところは実がたっぷりあるので、自家用には味わえます。
うまく乾かして、かびないように、しなびないように保存して楽しみたいと思います。

それでも親芋、子芋を合わせてこの日はこれくらいの収量でした

10月下旬の畑の風景です。
季節が代わり日が傾いて、山の影が伸びています。
これからの季節、午前中しか日が当たらないような畑です。
越年作物はミョウガだけが生きています。
11月には玉ねぎを定植します。
一番日当たりがいい場所に植えることにします。

うちの畑は全部日陰になっています。まだ午後です。
傾いた日が、山の端から辛うじてのぞいています

「鉄茶」を仕込む

農家と畑愛好者のバイブル「現代農業」に、最近注目の記事が載った。

鉄と茶葉を水に入れて作った「鉄茶」を畑に散布すると、作物の生育がよくなり、果実の味がよくなるという。

この「鉄茶」は専門的には「タンニン鉄」と呼ばれるとのこと。
タンニン鉄とは鉄分とタンニンが結びついたもの。
そのままでは吸収されない鉄分が、タンニンと結びついてキレート化することによって植物に吸収されやすくなるという。

鉄分は、植物の葉緑素の合成に必要なミネラルとのこと。
また、鉄分が細胞内のミトコンドリアを活性化させ、エネルギー代謝が高まるため、植物が余った養分を果実の充実に回せる、とのこと。

早速、「鉄茶」を自作してみた。

20リットルのポリタンクを用意。
「現代農業」では鉄素材として、100均ショップで300円で売っている鋳物にフライパンを推薦していたので、買ってみたが、ポリタンクには入らない。
そこで山小舎を物色すると、あったあった、ドリルの先の錆びたやつなどなど。

茶葉は冷蔵庫にあった、水出し煎茶を数パック使った。

早速、ポリタンクに水を満たし、錆びドリルを入れ、煎茶パックを放り込んだ。

現代の畑の世界は、脈々と営まれてきた伝統的な畑づくりが、ひとつ前の世代で途切れるという稀有なタイミングを迎えています。

放棄された畑の土壌が、科学的・物理的に劣化していたり、排水・用水の構造が壊れていたりします。
野生動物との共存のバランスが崩れてしまっていることもあるでしょう。
農に関する職人的な知識・技能が途切れてしまっていることもあるでしょう。
放射性物質、化学物質などの汚染もあるでしょう。

その中で、素人でもできる、ささやかな一つの「対抗策」として「鉄茶」を使ってみようと思います。
最初は11月に定植する玉ねぎに使ってみます。