冬の山陰・北陸夜行列車の旅⑨ 富山地方鉄道と立山連峰

さて山陰・北陸の旅も5日目をむかえたこの日は福井から富山に移動しました。

ハピーライン福井鉄道で金沢まで

まず、福井から金沢行列車にICカードで乗車。
車窓は雪景色です。

続いて金沢駅で富山行きの列車にそのまま移りました。
車内はインバウンドで満席。
ボックス席の日本人男性の斜め向かいが空いていました。
男性はすぐ下車、すると向かいに日本人の若い女性が二人座りました。

昔はボックス席で相席となるのは当たり前でした。
山小舎おじさんが中高生の時、札幌から函館行きの急行ニセコに一人で乗っていたら、途中から3人組の女性が乗り込んできて相席となりました。
彼女らは当たり前のように普通の音量で普通の内容の会話をお互い交わしておりました。
聞くともなしに、彼女らが同郷の21歳の友達同士だということがわかりました。

いつからか、日本では車内の相席を避けるようになりました。
現在では長野県内の高校生など決してボックス席のおじさんなどには寄り付きません。

金沢で富山行きに乗り換え

満席以上の乗客を乗せ富山に着きました。
ここで問題が発生しました。
福井から金沢までは、ハピライン福井鉄道、金沢からは、あいの風とやま鉄道の運行となっており、福井乗車富山下車の場合ICカードでは精算できないというのです。
富山駅の改札口でICカードデータの消去をしてもらい、あいの風とやま鉄道分の運賃をその場で現金で支払い、ハピライン福井の運賃は福井に電話して現金書留で680円を支払はなければならなくなりました。
しかも現金書留量、切手代の510円ほどはハピライン持ちなので、実際の送金額は100円に満たなかったのです・・・。

富山駅に到着

旅の終盤でのトラブルに疲れて富山駅構内をさ迷うと、駅構内ではテーブルが並べられ、即席のステージが設置され、あまつさえ巨大なアンコウが吊るされている光景が目に入りました。
日曜日の催しとして、近県の名産を集めたフェアが行われるようで、駅前には早くも人が並んでいます。
アンコウ鍋が湯気を立て始めています。
地元の人々による活気です。

駅構内では催し物が
吊るされたアンコウ

一方、富山駅の構内、駅ビルは、福井駅の数倍の規模で混雑しています。
こちらは観光客による賑わいです。
駅ビルの回転ずしに並ぶ人の数と殺気立った雰囲気は、福井駅の比ではありません。

駅ビルの売店にて。富山といえば鯛のかまぼこ
ケロリンも富山発祥だった

旅行中ここまで我慢した寿司を食べるため、駅前の回転寿司に並びました。
半分ほどがインバウンド客で、カウンター内の職人が「ニーハオ」などと愛想を振りまくような店です。
テレビの番組で回転寿司の全国ナンバーワンになったとありました。
せっかくなので、ノドグロ、ズワイガニ、シロウオなどをつまみました。

テレビで有名な駅前井の回転寿司
ノドグロ
ズワイガニとイカ

路面電車に乗って市の中心部を一回りしました。
合図がないと停留所は通過する、いわゆる路面電車です。
途中、お城で降りて天守閣を上りました。
資料館には富山の薬売りの歴史などが展示されていました。
行商で財を成した富山の先人たちはそれを銀行などに投資し、地元に還元したとありました。

路面電車
富山城

立山を見たかったので、JR富山駅近くの富山地方鉄道(電鉄)駅へ行ってみました。
切符売り場の女性がとても親切な人で、「立山を見るなら電鉄線の立山駅がいいが、倒木のため一部不通。途中の岩くら寺という駅までは行っている」と案内してくれました。

富山地方鉄道、富山駅

富山は「鉄軌道王国」とも呼ばれているそうで、なるほどJR北陸線を継ぐ第三セクター線のほか、富山地方鉄道が3本の路線をつなぎ、市内には路面電車も走っています。
富山地方鉄道の不二越・上滝線に乗れば立山の麓に近い場所まで行けるのです。

岩くら駅行き

途中までは郊外の住宅地を走り、雪景色の中を立山方面に南下する電車に乗ります。
天候はどんよりしており、写真などで見る鮮やかな立山連峰の秀峰はなかなかその姿を現しません。
途中、遠方に雪山が見えましたが、立山なのかどうか?
そのうち終着駅に着きました。

立山連峰?

終着の岩くら駅にはびっくりしました。
昭和初期の時代設定にも使えそうな年季が入った駅舎です。
駅の案内板、切符売り場などは設置されてから幾年たっているのでしょう?
この先は乗り換えが必要なターミナル駅というのもいいです。
周りの風景、雰囲気ともマッチしています。

岩くら駅駅

あいにく立山の姿は拝めませんでした。
ただこの駅の先も線路が続き、立山連峰をトンネルで越えて黒部ダムを越えると長野まで続いていのるだと思うと、別の季節に再訪してみたい思いを止めることはできませんでした。

ポスターに見る立山連峰

JR富山駅に戻り、新幹線の切符を買って長い旅を終えました。

北陸新幹線の開通は北陸地方にとって時代の契機となっていました。
駅周辺は中央資本のホテル群が林立し、駅ビル内には全国チェーンの飲食店などが軒を連ねています。
ただ、その賑わいを一歩越えるといつもながらの落ち着き、ひなびた地方都市そのままの姿を、敦賀も福井も富山も見せています。

新幹線が伸長していない、鳥取、島根は駅そのものは便利になっていますが、駅前はまだ中央資本の毒牙にかかっていませんでした。
インバウンド客が集まる場所とそうでない場所もはっきりしていました。

次回の旅は軽トラでの気まま旅でもいいし、山陰を出雲から先へ向かう旅でもいいし、富山から立山を越える旅でもいい・・・。
また元気で行きましょう。

最後の旅飯(立山そばと鯛の押し寿司)

冬の山陰・北陸夜行列車の旅⑧ 福井鉄道と居酒屋での交流

敦賀から福井に来ました。

JR北陸線のこの区間はいつの間にか、ハピラインふくいという第三セクター?になっていました。
車内はこれまでの山陰線や小浜線と違ってアジア系のインバウンド客が乗っています。
北陸新幹線運行の区間に入りいよいよ観光地本番の感がします。

福井駅前

ICカードで降りた福井駅の駅ビル構内にまずびっくり。
駅本体とつながったビル内には、回転ずし、ソースカツ丼、海鮮丼などの飲食店が贅を凝らして並んでいます。
カウンター方式の回転寿司店の脇のウインドーには、鮮魚や寿司折などの水産物がキラキラ光って売られています。

首都圏や有名観光地ならば人が押し掛けて殺気立つのですが、まだまだ規模が小さく、人出が少なく落ち着いた雰囲気なのが安心します。
福井の名産品も売られています。
日本酒や銘菓羽二重餅が目立つのも、福井らしくひなびています。

駅ビルの海鮮店。気合が入っている
駅ビルの回転ずし。入店待ちが少々
色とりどりの海鮮折

一方、化石産出で有名な福井県は恐竜で町おこしもしており、エキナカ、駅前は自動で動く恐竜の模型があちこちにあります。

駅前の恐竜

さて福井でどうしましょう?
駅の観光案内所を訪ねることにしました。

案内所で、「路面電車に乗ってみたい」というと、係の高年に差し掛かった美人の奥さんが「1日券を買って、武生まで行ったらどうでしょう。電車は一部は路面を走っていますが(正確にいうと路面電車ではありません)」と返答してくれました。

なるほど市内を出ると軌道を走る電車なのだな、路面電車が乗降客がない駅では停車しないのに対し、JR線のように全駅で停車するようだし、と思いつつ、吹雪の駅前を郊外電車乗り場まで行って、無人の販売機から1日券を買い、電車を待ちました。

福井鉄道の駅前停留所

駅前から小一時間走って隣の越前市にある武生駅に着きました。
古い町が残り、いわさきちひろの生家が残っているところですが、現在ではJRと福井鉄道の駅前にショッピングセンターが一つあるような地方都市です。
何せ舗道も大雪で歩行が困難なので、1時間ほど市内をぶらついて折り返しの電車で福井へ戻りました。

福井鉄道車内

ここで今夜の宿探し。
ネット経由はあきらめているので、とはいえ安めのビジネスホテル情報をネットで探し電話してみました。
駅からは福井電車で数駅先、料金3000円の宿が見つかりました。
風呂、トイレは共同です。
電話してなかなかつながらず、車で来るなら駐車場が2,3台しかないからダメ、チェックインはわかるように鍵を置いとく、という、電話口のおかみさんの応対も気に入りました。
後は夕食の場所探しです。

この日の泊りは市内のビジネスホテル。風呂が自慢
個室内。不自由なく寝られました

福井電車を降り、福井駅前の観光案内所へ性懲りもなく出かけました。
先ほどのご婦人とは異なる、特別に親切な方が、此方のリクエストに応えてくれました。
飲み屋は駅近くの片町という場所にあること、中でも庄屋という居酒屋がおすすめだと。
「えつ全国チェーンの庄屋?」とがっかりした山小屋おじさんに、そうではなく地元の店との案内。
ご婦人は、こちらが持っていた飲み終わったコーヒー缶を「捨てましょう」と控室のゴミ箱へ捨ててもくれました。
福井に対する印象が爆上がりしました。

無人?のホテルでメモと一緒に置いてあったカギを受け取り、投宿。
出直した片町のアーケード街は歩く人もいません。
目指す庄屋を見つけ戸を開けました。
6割ほどの入り、活気はあります。
安心してカウンターに着席、すぐ隣は独酌の中年男性でした。
この後約二時間ほど、隣の中年と話が弾んだのでした。

今年60歳で現役の勤め人だという中年さん。
兵庫県出身、関西弁のイントネーションで話をそらしません。
若いころの北海道ユースホステル旅の話から、地元の兵庫県の沿線情報、隠岐の島をはじめ出張で歩いた全国各地の話まで。
こちらの島根からここまでの旅のルートを聞き「西村京太郎のトラベルミステリーのようだ」と何度も繰り返します。
この居酒屋がお気に入りで、福井の近くに泊まる際はここに寄るとのこと。
こちらから「敦賀のてんてんはよかった」というと興味深そうにしていました。

関西人らしくそつなくこちらを立て、当たり障りない話に終始しようとする姿勢がもどかしかったのですが、思わずこちらが漏らす大坂維新の悪口なども「日本はどこやらの国と違って、何喋っても自由ですから」と笑っていました。
その店で頼んだ刺身盛り合わせとフキノトウ天ぷらが冷めるまでしゃべり倒し、中年さんが帰ってから熱燗とおでんで締めました。
ホールには日本人のご婦人が二人ほどおり、マメに動きつつ客対応もそつなくこなしておりました。
中年さんが帰った後で「あのお客さんは常連さんで、父親を連れてきたこともある」と話してくれました。

ええだけ飲んで、夜でもここだけは不夜城のような福井駅周辺をかすめ、福井鉄道で宿へ戻り、自慢の風呂に入って暖まりました。
明日は6時の始発で福井駅に向かうことにして就寝です。

居酒屋からの帰り、福井駅周辺の明るさ

次回、最終回・観光名所に変貌した富山の様子をお楽しみに。