「峠を攻めて」みたい

長野県は山の国です。
県内の都市、町はおおむね盆地にあり、その盆地は山によって区切られています。
山の低いところは峠と呼ばれ、盆地と盆地とを結ぶ交通路となっています。

山小舎を中心に見ても、大門街道を諏訪地方へ超える「大門峠」、中山道を諏訪へ抜ける「和田峠」、中山道を佐久方面へ超える「笠取峠」、白樺湖から佐久へ抜ける県道40号線沿いの「雨境峠」などがあり、山小舎おじさんは生活道路としてよく通ります。

八ヶ岳を小海地方に向けて横断するメルヘン街道こと国道299号線の「麦草峠」も通ってみました。
伊那谷へ抜けるには、茅野と高遠を結ぶ杖突街道の「杖突峠」を通ります。

上田盆地の最西端、塩田平にある青木村から、松本盆地に向けての間道というか、山道に「保福寺峠」があります。

日本アルプスの父と呼ばれた、イギリス人宣教師・ウインストンが、上田から青木村を抜け、「保福寺峠」までやってきてそこからの景観を絶賛したとあります。
また中世まで、近畿から東国を結ぶメインルートであった、東山道が通ったといわれる峠道です。

9月に入った夏日、「保福寺峠」を通ってみたくて、青木村へ軽トラを走らせました。
ところが、峠への分岐点まで行くと「保福寺峠までは行けますが、通り抜けできません」との看板が。
昨年の台風19号の被害のようです。

青木村から鹿教湯温泉へ抜ける山道も、去年から通行止めとなっています。
遠方では佐久穂町から群馬へ抜ける武州街道も十国峠付近が通行止めとなったままです。

仕方がないのでUターン。
国道143号線へ戻り、松本に行こうか?と、初の「青木峠」越を試みました。

国道143号線を松本方面に走ってしばし、国道から右折する県道12号線に接しました。
山の中へ分け入ってゆく、なかなか魅力的な道の雰囲気を醸し出しています。
地図で確認すると、ぐるっと回って千曲川沿いの戸倉上山田に戻るルートです。このまま143号を走ても松本まで40キロ以上もあります。
えいっと右折しました。

ほとんど交通量のない山道。
つづらに上ってゆく県道12号線。
路面には走り屋たちのタイヤの跡。
やがて左手に修那羅石仏群の案内板が見えました。

国道143号線から分かれた県道12号線
県道12号線は、修那羅峠まで急な上りが続く

気になったので行ってみました、石仏群。
ふもとの集落から車道が続いています。
安宮神社へと続く山道。
神社の境内に石仏群があるようです。

江戸時代に修験者が開いたという神社とその神社に奉納された石仏たちが参拝客を人知れず待っていました。

峠を下ったたりの集落に安宮神社の参道入り口がある
参道を登り切り、駐車場を降りると神社の境内へと続く参道がある
杉の巨木が両側に並ぶ参道。戸隠神社ほどではないが神々しさが漂う
参道の途中で鳥居が参拝客を迎える
安宮神社の本殿。猫はいたが人気はない
本殿で記名し、とパンフレットとお札をいただく
案内板に沿って、ここをくぐり石仏群を見に行く
石仏群が神社の裏側の山頂で待っていた

ここは青木村から峠を越えた、東筑摩郡の築北村というところ。
神社のふもとの集落は俗世間をはずれた別世界の雰囲気。
県道は交通量もほぼなく、ストレスなく別天地へのドライブが楽しめました。

もう別天地過ぎて、早く通過しないとこのまま別天地から出られなくなってしまうのではないか?とさえ思ってしまうほどの「別天地」感に満ちたルートでした。

県道12号線はやがて開けた田園地帯に達し、県道55号線へと合流。
このあたりは山間というには広めの盆地風景を展開。
傍らにはJR篠ノ井線も走っている。

篠ノ井線は長野市郊外の篠ノ井から松本を経て塩尻へと至る、中央本線と旧信越本線を結んだ路線となる。
関東から続く、中央本線、旧信越線という幹線を、長野県内で繋いでるのが篠ノ井線。
鉄道の役割が相対的に低下している昨今は、民間委託か廃線かにおびえる、忘れられた路線にも映るが、沿線に歴史と文化を湛えた魅力ある鉄路でもある。

JR篠ノ井線の冠着駅
県道55号線を上ってゆく。前方にはまた峠が・・・

篠ノ井線とはすぐ分かれて、千曲川沿いの戸倉上山田へと向かう県道55号線。
途中の「四十八曲峠」は長いトンネルでくぐる。
交通量の割には立派なトンネルをくぐると、千曲川へ向かっての急な下り。
リンゴやブドウなどの果樹園が目立つ田園風景を抜けると戸倉上山田へ至った。

峠を攻めるつもりが、忘れられたかのようなひっそりとした、魅力あふれる別世界ルートに巡り合うことができた旅だった。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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