DVD名画劇場 グラマー女優一代!ジェーン・ラッセル

ジェーン・ラッセル。
大富豪ハワード・ヒューズが自ら監督した唯一の映画「ならず者」でデヴュー。
その煽情的?な宣材写真が検閲に触れ公開が遅れた、という伝説を持つグラマー女優。
その代表作3本を見る機会があった。

ジェーン・ラッセル

「ならず者」 1946年 ハワード・ヒューズ監督 RKO

ジェーン・ラッセルのデヴュー作。
どんなにセンセーショナルな内容か?と思いきや、何ともとぼけた西部のヒーロー達が男の三角関係?を繰り広げる物語だった。

曲者すぎる出演者たちと若きジェーン・ラッセル

ウオルター・ヒューストン演ずるドク・ホリデイ。
トーマス・ミッチェル扮するパット・ギャレット。
新人ジャック・ビューテルのビリー・ザ・キッド。

男同士でのかみ合わないセリフ、繰り返される意味のない動作。
赤毛の馬にこだわり、たばこを取り合う。
彼ら3人の醸し出す、緩いというか、間延びしたというか、何ともいえない世界。

すっとぼけたウオルター・ヒューストンのキャラと、芸達者なトーマス・ミッチェル、素人っぽいジャック・ビューテル。
この3人に絡む男勝りの野生の女がジェーン・ラッセル。
最高に魅力的な女性なのだが、男たちはこのいい女をあっさり譲り合う、という不思議な展開。

これが「ならず者」の宣材写真だ!

ハワード・ホークスの監督で撮影が始まったこの映画。
当時、ジェーン・ラッセルに夢中だったスポンサーのハワード・ヒューズが、ホークスを更迭して自ら演出した。
監督が素人のヒューズだからなのか、ヒューストンの個性を出しすぎた?独特の演技が(監督を無視して?)冴えわたる。
一方で、監督の「ひいき」にもかかわらず、己の存在感を失わないジェーン・ラッセルがただものではない。

ジェーン・ラッセルの印象の強烈さはヒューズ監督にとってもこれが本望か。
記念すべきはジェーン・ラッセルの伝説が、この映画でスタートしたこと。

「腰抜け二挺拳銃」 1948年  ノーマン・Z・マクロード監督    パラマウント

ジェーン・ラッセルのネット上のフィルモグラフィによると、彼女の第2作目。
ご存じ、ボブ・ホープの腰抜けシリーズのゲストヒロインとして登場。
有名なこの映画主題歌「ボタンとリボン」は劇中ホープの弾き語りで歌われる。

テクニカラーの画面に当時25,6歳のジェーン・ラッセルのドレス姿が映える。
女ガンマンスタイル(カラミテイジェーン役)で、時にはガンアクションを披露。
時にはカラフルなドレス姿でホープとのラブシーンもどき、と活躍するラッセル。

映画は西部を流れるインチキ歯医者に扮するホープが、インデイアンにダイナマイトを横流ししようとする悪漢たちと、それを取り締まろうとする州政府の攻防に巻き込まれ、たわいないギャグとトークで場をつないでゆく、というギャグアクション。

調子がいいだけのインチキ弱虫のお馴染みのキャラを全盛期?のホープが演じる。
まだ若い動きの良さと、毒の薄いギャグのマシンガントークが切れ味いい。

主題歌ボタンとリボンのオリジナルレコードジャケット

ラッセルは、男にこびず自力で世を渡ってゆくカラミテイ・ジェーンのキャラクターが似合う。
「ならず者」でのキャラクターの延長線上の役柄。
ホープのギャグ映画でのびのびとヒロインを演じている。
全編が大掛かりなコントのようなこの作品で、唯一見ごたえを感ずることができる存在感を示した。

「紳士は金髪がお好き」 1953年 ハワード・ホークス監督  20世紀FOX

ラッセルのデヴューから7年目の作品。
現在ではむしろマリリン・モンローの主演作として認知されているこの作品だが、クレジットの順番はラッセルがトップ。
その存在感はいや増していた。

マリリン・モンローとのそろい踏み。左は「紳士」たち

テクニカラーによる原色の背景と衣装。
のっけからラッセルとモンローのご機嫌なダンスから映画は始まる。

ラッセルとモンロー扮する踊り子二人が船に乗り込み、金持ちの紳士たちを篭絡せんとするストーリー。
乗り込んだ船で同乗のオリンピック選手団とラッセルが意気投合し、歌い踊るミュージカルシーンが楽しい。

スタイル抜群

ラッセル扮する姉御は余裕たっぷり。
発達の良い脚線美も豪快だが、踊りもゴージャス。
若いモンローの踊りやふるまいに、かわいらしさと繊細さを感じさせるのとは対照的。
どちらもいい。
ホークスのはっきりとした演出はラッセルのキャラにあっている。

DVDのカバーはモンローをフィーチャー

この3作品を見ると、ジェーン・ラッセルはアメリカ女性らしく堂々たる体躯を誇った典型的なグラマーではあるが、スキャンダルの間を泳ぐような煽情的なハリウッド女優ではなく、むしろさっぱりとした開放的な性格の女優であると思わせる。

デヴュー作でスカウトされた富豪ハワード・ヒューズにもなびかなかったというし、スキャンダル史上にその名もない。
むしろ「紳士は金髪がお好き」撮影中に、繊細なモンローの代わりにマスコミの矢面に立つという「男らしさ」を示したというエピソードが物語る、開放的で姉御肌に富んだ女優だったようだ。

だからこそそのさっぱりした性格が、ラッセルをしてハリウッドのセックスシンボルとなしえなかった。
各年代のセックスシンボルと呼ばれた、クララ・ボウ、ジーン・ハーロー、マリリン・モンローが持つ、幼児性、神秘性、背徳性、煽情性に寄らず、常識的で大人の女性だったのだろう。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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