定年おじさんと仕事

おじさんにとって仕事とは

定年退職後のおじさんは、退職金のほかには年金ぐらいしか収入がないのが通例だ。
株だの不動産収入だのという不労所得には縁がない。
隠居生活を送るにはまだ体力、気力が残っている。
定年退職しておきながら、おじさんにとって無職という状況は脊髄反射的に落ち着かない。
会社生活を終えて心底清々し、二度と会社には足を踏み入れたくない、と思っていてもだ。
かみさんや子供が働いている家庭で毎日過ごすのであれば、なおさらである。

これは、たとえ単身で田舎に暮らしていても同じだ。
アルバイトなどで報酬を得た時の達成感、充実感は、年金をもらった時の安心感とはまた違う。

改めて実感する。男は働いてナンボやと。
だったら、無理せず男のサガに逆らわず、定年退職後の時間を過ごそうではないか。60歳代よ。

おじさんの就業の現実

とはいえ、定年後のおじさんの仕事には何があるか。
ハローワークにでも行ってみるといい。
年齢不問の求人は数多くあるがそれは建前で、実際に特技のない60歳以上が採用される職種といえば、交通整理が関の山。

だから多くは可能な限り会社に残ろうとする。
今は65歳まで会社にいられる。
サラリーが3分の1になり、年下の社員に相手にされなくなるのを我慢すれば、通勤定期がもらえ、退社時間まで時間がつぶせる場所が用意されるのだ。
ほかにやることがなく、家庭に居場所がない多くの60歳代には願ってもないことなのである。

我がおじさんが住む、長野県の別荘地でも働き場所はある。別荘の管理会社が採用する作業バイトである。
別荘住人など60歳代以上が10人近く就業している。
主に別荘住人を採用対象としているので労務管理はゆるく、極端に言えば行きたいときに行けば働ける。
ただし丸1日もの落葉かきや雑草刈りの仕事は、慣れない60歳代にはきつく、例え週3回程の勤務でも続かなかったものだ。

働きたいが仕事がない。
かといって会社にはもう残りたくない。
いざ仕事があってももう無理はできない。
というのが定年おじさんの実情なのだ。
わがままかなあ?

おじさんの「仕事」は「生産」を目指す

定年おじさんは仕事に対してわがままだろうか?
家計を担う主力からは引退した。
男一匹程度は当面自活できる。
家族と喧嘩別れしたわけではない。それどころか、家族や知り合いに喜んでもらうのが生きがいである。

働けはするが体力的に無理はできない。いやなことまでしたくはない。
何らかの手段で報酬を得て達成感を味わいたい。

畑を借りている。
山小屋の周りは1500メートルの高地なのでトレーニングには向くが、野菜の栽培には向かない。
周りが傾斜地なのでそもそも耕地には適さない。

縁があって高度600メートルほどの地に耕地を借りることができた。
最初は1か所50坪ほどの畑だったが、同じ大家さんからもう1か所同程度広さのを使って欲しいとのことだった。耕運機も草刈機も使っていいとのこと。
ことしから2か所の畑を耕すこととなった。

素人にいきなり100坪規模の耕作は厳しいが、山小屋暮らしの「仕事」のひとつ。畑は長らくやってみたかったことのひとつである。

去年は収穫の全部は、自宅消費のほかは大家さん、別荘地の近所へのおすそ分けだった。
インゲンがとってもとってもできた。大根は短かった。白菜は途中で病気が出た。玉ねぎはピンポン玉程度の大きさだった。

今年は、トマトを昨年の倍の作付けとし、ジャガイモ,サツマイモ、とうもろこしなどに初挑戦。
ジャガイモはそれでも山小屋や自宅、おすそ分けでは処理できないほどの収穫となった。
ハックルベリーや食用ホオズキといった珍しい苗も植えてみた。

作物を別荘地内で7月中旬より開催される朝市に出品した。
毎日出品するほどの収量はなく、一日おきに出店した。

ハックルベリーのジャムの作り方を説明して買ってもらった奥さんが、うまくできたからと、また買いに来たことがあった。
食用ホオズキを食べたことがないというおばあさんが、試食をして買っていったことがあった。

「仕事」の成果である作物を介した会話のうれしさ。
作物が売れ、価値へと変換する瞬間の幸せ。
ここまで育った作物の健気さへの感謝。

生産という仕事が報酬に「昇華」した瞬間!

定年おじさんの生きがいが一つ見つかった。

 

 

 

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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