山小屋おじさんの住む長和町を東西に貫く中山道。
江戸五街道の歴史を刻み、現在は関東圏と中部・北陸を結ぶ物流の動脈として命脈を保っている。
長和町には、中山道の宿場として和田宿と長久保宿がある。長久保宿から江戸方面に笠取峠を越えると、芦田宿があり、もう一つ江戸方面に行くと望月宿がある。
佐久方面へ向かった山小屋おじさんは望月宿を訪ねてみた。
望月歴史民俗資料館へ
トラックが行きかう国道142号線(現中山道)。
笠取峠を越えて、左に折れ、望月宿に入ってゆく。
とたんに表通りの「雑踏」から裏通りの「日常」に戻ったような静寂(沈滞?)の雰囲気に包まれる。
角に中山道の道しるべ。
旧街道を歩くウオーカー用だろうか。
望月宿へのイントロダクションとしてふさわしい風景だ。
宿場の街並みは日曜日なのに人影もなくたたずんでいる。
ひと先ず、民俗資料館へ。
地域の情報を系統的に把握するには資料館に飛び込むのが一番だ。
入場料310円。
先史時代の土器類から、宿場時代の絵図類、戦後の生活道具類までをコンパクトに展示しており郷土への誇りと愛着が感じられる資料館。
中でも、鎌倉時代からこのあたりで馬を飼い慣らす「牧」があったこと、終戦直前にこの地に陸軍士官学校が神奈川県から移転してきたことが目を引いた。
中世から戦中にかけてこの辺りはある意味で「選ばれた場所」だったのだ。
本陣は現在医院になっています。
重要文化財の建物です。
「犬神家の一族」ロケ地
1976年の「犬神家の一族」は角川書店の大々的宣伝の先駆けという意味でも画期的な映画だった。
作品自体も市川崑監督の個性と、当時のスタッフ、俳優の力量がマッチした満足できるものとして記憶に残った。
この映画で冒頭、金田一耕助がクライアントに招かれ、投宿する「那須ホテル」のロケ地が望月宿である。
ロケ地は出野屋旅館といい、現在も営業している。
旅館の様子は「日本ボロ宿紀行2」に載っている。
同書によると戦前は芸者の置屋として繁盛し、戦後は下宿屋に転業した歴史を持つ、凝った造りの宿屋だそう。
食事には佐久名物の鯉料理もつくそう。
予備知識がなければ営業しているのかどうかもわからないほどの人気のなさが気になりますが。
バスターミナル周辺に昭和の繁栄の名残
望月宿の街並みは数百メートルの長さだが、街並みの一番佐久寄りにバスターミナルがあって、現在の宿場の中心地がターミナル周辺であることがうかがえる。
バスターミナルは不釣り合いなほど広い敷地で、かつては乗客でにぎわっていたことが想像される。
正面の書店は閉まって久しい感じだが、比較的大きなつくりの書店からも、ターミナル利用客や宿場自体の人口が多かったことがうかがえる。
諸行無常。