上田映劇で観た「星屑の町」

好きな町・上田に行ってきました。
上田映劇の13時からの回が、のん主演の「星屑の町」だったこともありました。

6月からコロナ後の上映を再開した上田映劇。
日芸を出た後、地元にUターンして、NPO法人・上田映劇を立ち上げた支配人によると、「再開後の業績は2割減」とのこと、この日の「星屑の町」の入場者も全5人。
平日としては通常運転の入りではないでしょうか。

いつものたたずまいの上田映劇

「星屑の町」。
2020年公開の新作です。
売れない中年コーラスグループを題材にした、ラサール石井の舞台劇の映画化。
のんこと能年玲奈の6年ぶりの映画出演作です。

なんとなく、のんをヒロインとしたロマンチックなファンタジーをイメージして観たのですが、いろんな意味で「裏切られ」ました。

上映作品のポスターが貼られている

ドサまわり数十年の売れないおじさんコーラスグループの話。
誰も興味のない題材です。
演ずるのはラサールをはじめ、渡辺哲、でんでんといった配役。
いずれも正直「一仕事終わった」役者だ。
キャラに準じた配役だということはわかるが、もうそろそろ彼らのキャラを演ずる役者も、10歳くらい若返って世代交代してはどうか?と、映画の最後まで思って観ていた。
ただ、ひねくれキャラの有薗芳記という役者だけは良かった(というか他の出演作の色がまだついてい役者だった)。

コーラスグループのボーカル役の太平サブローの配役がまた微妙。
当時の彼のメインの仕事の「快傑えみチャンネル」で女帝のアシスタントを務める合間を縫っての出演だったろうが、そのしゃがれた関西弁といい、醸し出す「すれきった」芸人の風情といい、この作品に一つの深みを与えていた。
すなわち、「芸達者なインテリおじさん役者たちが『批評的』に演じる、芸能界の底辺を題材とした、いわば『学芸会』に、芸能界の底辺を体で知っているホンモノ芸人がもたらす場違いなリアリテイー」みたいなものをサブローは振りまいていました。

大平サブローの配役は、すんでのところで映画全体のコンセプトもぶち壊してしまいかねないものでしたが、ギリギリでコントロールされていました。
劇中で、グループ解散のきっかけとなる、サブローと他のメンバーの言い争いのシーンがありましたが、リアルな彼らの本音の言い合いを見ているようで、本気でひやひやしたものでした。

のん、ですが、よくぞ制作側が配役してくれた!
期待通り、期待以上の出来上がりでした。

制作の背景には、岩手県などの協力がありました。
のん、と岩手県を代表とするその支援者たちは、まだ、あの偉大な「あまちゃん」を引きずっているのです。
背景的にも、舞台設定的にも「星屑の町」は「あまちゃん」の後日譚でもあったのです。

「あまちゃん」放送時の2013年当時は、山小舎おじさんもよく東北に出張していましたが、盛岡の駅が「あまちゃん」一色だったことを思い出します。

イメージより大柄で、下半身もがっちりしている、のん、ですが、前半は、高卒後数年、不本意ながら地元岩手で、実家のスナックを手伝いながらくすぶっているという「あまちゃん」の後日譚を淡々と演じますが、後半になって文字通りさく裂します。

おじさんコーラスグループのボーカルに入って、めきめきと売り出し、温泉の休憩所から、体育館、テレビスタジオへと活躍の場をステップアップしてゆきます。
おじさんコーラスをバックに歌うのは、ピンキーとキラーズの「恋の季節」、島倉千代子の「本気かしら」、映画オリジナルの「シャボン玉」など。

ちょいとレトロなファッションで、舞台用のメイク。
ステージシーンの、のんの、映えること映えること!

踊りも表情も、相変わらず素人っぽいというかぎこちなさが残っていますが、彼女のスター性がすべてをカバーして余りあります。

「おじさんたちの物語」という映画の主題上、のんのステージシーンはサワリに徹しており、物足りなさが残りますが、これくらいでちょうどいいのかもしれません。

古い歌謡曲がバンバン出てきて、60歳代のレトロな心情を直撃します。
メイクアップした、のん、が古い歌謡曲にまた不思議と合うのです。

この作品のメインテーマ曲が、島倉千代子の「本気かしら」。
昭和、ムード歌謡、芸能界、ドサまわり、といった世界をドンピシャの感性で表現する名曲だと思います。
「ウオーターボーイズ」(2001年 矢口史靖監督)におけるフィンガーファイブの「学園天国」の使い方を思い出します。
映画のイメージとピッタリの選曲です。

あと、忘れてはならないのが戸田恵子。
おじさんコーラスの更に前座を務める売れないおばさん歌手役です。

彼女は、見た目は地味な便利屋風ですが、まがうことなき実力派です。
作曲家・宮川彬良の音楽番組を偶然見たことがあるのですが、彼女が生バンドをバックにキーハンターの主題歌「非情のライセンス」を歌っていた姿が忘れられません。
これを見たときは、瞬間、野際陽子のパロデイだと思いましたが、オリジナルより数段上の歌唱力で、宮川ワールドを体現していました。

戸田恵子は劇中でも、おじさんグループの前座ながら、彼女のオリジナル曲も含めてたっぷり歌い上げています。
彼女の実年齢が山小舎おじさんの一つ下なのがびっくりですが、まさに「これしかない」配役だと思います。

「星屑の町」は、のんが「あまちゃん」からリスタートする瞬間を題材とした作品でもありました。
劇中でのんが「もう前しか見ない」と叫んでいましたが、次回もぜひいい意味で裏切られる、のんの新作を見たいものです。

毎月発刊されている「上田映劇ジャーナル」

「星屑の町」を観た日、上田の町を歩く

真田坂にある新刊書店、平林堂にいきました。
雰囲気がよく、入りやすい本屋さんで、郷土関係書がそろっています。

レジのお姉さんに「上田のタウン誌はないの?」と聞いてみると、「10年前くらいまではあったが、広告が取れなくなってなくなった」とのこと。
唐突な問い合わせにも、話を切ることなく応対してくれました。

市内の目抜き通りに接する、平林堂書店
今回のお買い上げ

昼食は、気になっていた相生食堂へ。
昼食時なので店内にはほかに、昼休みと思われる2組ほどが。

70歳代の夫婦がやっています。
ソースカツ丼を注文。650円でした。
食後にヤクルトをくれました。
ちょっとうれしかった。

ソースカツ丼。650円。漬物は自家製。てんぷらはニンジン葉です
相生食堂の前景。食後にもらったヤクルトと

映画まで時間があったので、いつもの富士アイスでソフトクリーム。
150円です。

海野町商店街の富士アイスにて

信州第三の町・上田に残る産業遺産。

表通りの裏側から蔵造りの倉庫を撮る
今は閉店した倉庫兼商店の建物
旅館の建物。「日本ボロ宿紀行」にも紹介されました

街角点描。
個性豊かな町、上田の街角。
さりげない風景の中に得もいわれぬ個性がにじむ。

古いゲーム機専門のゲームセンター。ローカルテレビで紹介されていました
ピザの看板がかかっていますが、揚げパンがおいしいテイクアウト店

上田には信州大学の繊維学部があります。

明治創設の上田蚕糸専門学校が母体。国立大唯一の繊維学部
信州大学は松本に本部を置くが、長野、伊那などに分かれて学部が存在する

県内で累計200人ほどの感染状況ですが、コロナ下の上田の飲食店街の現状です。

ここで昼食を食べたかったが・・・。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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