上田映劇で「新聞記者」を観る

今年話題の映画「新聞記者」を見た。
レトロな劇場・上田映劇の9月第一週初回上映のプログラム。

ここは山小屋おじさんが上田に行ったときに必ず寄るところ。
戦前に芝居小屋としてスタートし、その後映画館に。
いったん廃業となった後、NPO法人が運営して再スタートした歴史上の場所である。

久しぶりの上田映劇、入場者は30人も!

平日の初回10直上映ながら30人近い観客数。
山小屋おじさん3回目の上田映劇でこんな大人数は初めて見た。

入場券を買う際に、シニア料金の1,100円の入場券が支配人の一番手前に置かれていたのを見た。
場内はほとんどシニア。
支配人も1,100円の入場券ばかりを切ったということか。

誰が「新聞記者」を作ったのか?

さて「新聞記者」。
時の日本の権力者、もっと言えば官邸の反民主主義を正面切って批判した珍しい作品。
原作は東京新聞の望月記者の同名書。
菅官房長官の記者会見で、手を挙げたのに発言を許されなかったというエピソードを持つ記者が原作者だ。

実例のエピソードから、官邸の横暴な権力行使ぶりを描写してゆくが、この作品のテーマは、権力というものの性質そのもの。
つまり、権力はその行使に際して真の目的を国民から隠すこと、また権力の遂行に際しては非合法も辞さないということだ。

権力を揶揄する、もしくは抽象化・一般化して広く勧善懲悪のドラマとすることはテレビなどでも行われている。
が、近時のスキャンダルをエピソードとしてストレートに問題提起した作品は今どき珍しい。
終戦直後の独立プロの作品のようだ。

だれが、どういう目的で作った作品なのだろう?
映画製作の背景はいかに?
見ている最中そのことばかりを考えていました。

現在のアンチと現在のヒーロー

かつてのやくざ映画などを見るまでもなく、「旧来の悪役」はわかりやすかった。
同義に反し、乱暴で、ずるいやつが悪役だった。

今の時代、牧歌的な悪役などいなくなり、「最新の悪役」として官邸が選ばれたということか。

かつてのヒーローは悪に耐え、堪忍袋の緒が切れて立ち向かい、やっつけた。
今の時代、ヒーローの存在が許されなくなっている。

一方の主人公の松坂桃李が官邸の悪を暴く情報リークし、予想される官邸側の反証・印象操作に対しては、実名発表を同意した時、一瞬だけヒーロー誕生!と思った、が。
「最新の悪役」は簡単にヒーローの登場を許すほど純朴ではないのだった。

主人公の女性新聞記者役は韓国人女優が務める。
危惧したキャステイングだったが、過剰な演技を排することができてかえって良かったと思う。

開始からスピーデイな展開で手際よくエピソードをつないでゆく、まじめでストレートな作品。
いい作品が持つ映画的緊張感に満ちている。

顔を知っている出演者が、松坂のほかには本田翼と西田尚美、高橋和也くらい。
日本若手俳優もこういった作品に出て、役者としてのキャリアを築いてほしいもの。

劇中エピソードが実例ばかりなのが、映画としての厚みを欠いたことは指摘しなければなりませんが。

NPO運営を応援し100円寄付

終映後、もぎりにいた支配人と話す。
丸眼鏡をかけたおとなしそうな青年で今どきは古本屋の経営者にでもいそうなタイプ。

おじさんは「新聞記者」のメインタイトルがわからなかったので尋ねると、開始に主人公の女性記者の登場場面がそうだったとのこと。
ちゃんと上映作品を見ていたことにも感心。

入場者が多いので雑談はそこまでにして寄付金箱に寄付をして退場しました。

次回の入場者数も含めて館内がにぎわっているのがうれしい、NPO法人経営の上田映劇でした。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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