「石井輝男キングオブカルトの猛襲」VOL.3 最終兵器「直撃地獄拳・大逆転」

というわけで、ラピュタ阿佐ヶ谷の石井輝男監督特集も最終週。
今回は伝説のハチャメチャ空手映画「直撃地獄拳・大逆転」(1974年東映)を観に行ってきました。

実は前日に、この作品を観ようとラピュタを訪れた山小屋おじさん。
4番目で入場できる券を買い、昼食へと外へ出た。
13時開映と思い込み、ラピュタへ戻ったのが12時45分頃。
そこでは、平日の初回とはいえ誰もいないロビーで、スタッフのお兄さんが一人、次回特集の看板用ポスターを繋ぎ合わせていました。

13時上映と思い込んでいたおじさんは、開映10分前に「10分前だけど?」とお兄さんに声をかけましたが、帰ってきた言葉は「12:30から始まってます」。
おじさんは焦ったが、すでに上映開始を30分近くも過ぎており、入場は不可。

結局は入場料を払い戻してくれましたが、ラピュタのスタッフには大変なご迷惑。
さぞ、思い込みの激しいクレーマー爺め、と思ったことでしょう。お手数かけました。

これが老化というものか・・・。
自分のせいとはわかりつつも、おじさん自身にもショックな出来事。

折からロビーへやってきた、人生の先輩と思しき70がらみの御仁と雑談して心を落ち着ける。
先輩はバスの無料パスを駆使して、都内の劇場をめぐるのがご趣味とのこと。
三山ひろしなどの演歌歌手が座長を務める講演や、会員パスを使っての映画鑑賞がターゲットで、この日も池袋の文芸座に高峰秀子特集を観に行ったものの番組が変わっており、池袋から中野行きのバスに乗って阿佐ヶ谷まで来たとのこと。

インターネットは使わないので、もっぱらビラを集めて鑑賞のスケジューリングをしているとのことで、山小屋おじさんにも演歌講演や文芸座のビラをくれました。

この先輩との雑談で、この度の「ショック」もどうにか和らいだ山小屋おじさん。
出直しの阿佐ヶ谷駅へと向かう元気が出たものでした。

殻に閉じこもりがちな映画ファンとの雑談は、旧知の間柄でもなくてはほとんどありえないもの。
対話に応じてくれた先輩には感謝のみ。
気を付けてお過ごしください。

さて翌日懲りずにラピュタへ。
今度こそ12:30分の上映開始に間に合うようにロビーへ。

「直撃地獄拳・大逆転」。
シリーズ第1作目の好評を受けて石井監督が受けざるを得なかった作品とのこと。
内容のハチャメチャ具合がすべてを物語っています。

たとえ監督さんの希望の企画ではなくても、プロならばメッセージ性を付与するなりして仕上げるところ、本作にはそういったものがほとんど見られません。
当時空手アクションでバリバリだった、千葉真一のアクションはたっぷりフューチャーしているものの、後の時間はおふざけと楽屋落ちに終始しています。

その楽屋落ちに付き合うのが、丹波哲郎、嵐寛十郎といった、石井組の重鎮たちなのですから、監督の不思議な魅力こそおそるべしです。
ラピュタの石井監督特集の最終兵器として、満を持しての上映です。

主演の千葉真一は、「仁義なき戦い・広島死闘篇」(1973年)で仁義もくそもない凶暴なやくざを演じ、鮮烈に芸域を広げていたものの、本作ではそれまでのヒーロー路線に戻っている。
というか、千葉ちゃんには折からの空手映画ブームをけん引する一連のシリーズ(「殺人拳」「ボデイガード牙」)という、いわば「本業」があるということでしょう。
アクションの切れはすさまじいものがあります。

ヒロインは東映入社2年目の中島ゆたか。
貴重な22歳の時の出演です。
1970年代、映画の時代は退潮をを迎え、この女優さんの代表作ともいうべき作品を残しえなかったのは残念です。

中島ゆたかと同クラスでクレジットされているのが、悦っちゃんこと志穂美悦子。
思えば「帰ってきた女必殺拳」(1975年)で彼女のアクションをスクリーンで初めて見たときは、その激しさ、華麗さ、りりしさが鮮烈に目に焼き付いたものでした。

本作ではラストで華麗なアクションを披露します。
久しぶりに彼女のアクションをスクリーンで観て目が覚める思いでした。
気合の入った掛け声がいいですね。

余談ですが後に長渕剛と結婚した悦っちゃん。
長渕が体を鍛えるようになった原因は、夫婦げんかの度にぼこぼこにされる長渕が、悦っちゃんに対抗しようとしたからだ、という話さえあります。

ということで、石井輝男監督特集が終わりました。
新東宝から東映に移り、活劇に独特なテンポを持ち込み、「地帯シリーズ」などに結実。
題材に、戦後闇市から、三国人との争い、麻薬や人身売買、香港マカオといったアングラなテーマを選び、その遊び心と好奇心はのちの、東映異常性愛路線につながります。

この間、「網走番外地」などのヒット作も連発。
松竹、日活にも招かれて腕を披露しています。

新東宝時代からの吉田輝夫、三原葉子、嵐寛十郎、丹波哲郎をはじめ、東映時代の小池朝雄から近年の岡田奈々まで、お気に入りの役者というか石井組の常連がいるもの特色。

日本映画の歴史の1ページを彩る個性的な映画監督です。

ラピュタ阿佐ヶ谷、モーニングショウの女優特集は、「江利チエミ」でした。

投稿者: 定年おじさん

1956年北海道生まれ。2017年に会社を退職。縁あって、長野の山小屋で単身暮らしを開始。畑作り、薪割り、保存食づくり、山小屋のメンテナンスが日課。田舎暮らしの中で、60歳代の生きがい、生計、家族関係などの問題について考える。60歳代になって人生に新しい地平は広がるのか?ご同輩世代、若い世代の参加(ご意見、ご考察のコメント)を待つ。

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