信州ソウルフード放浪記VOL.31 立岩和紙の里の日替り定食

山小舎から上田方面へ大門街道(国道152号線)を下り、軽井沢方面への分岐点を直進すると、上田市との境の少し前に、立岩和紙の里があります。

子供たちの和紙漉き体験の作品を天日干しする立岩和紙の里

本ブログでも、孫たちの和紙漉き体験の話や、秋の新蕎麦祭の話、を載せたことがある施設です。

食堂と土産物売り場への入り口

和紙漉き体験施設と、蕎麦を中心にした食堂、土産物販売所が併設されています。

入り口から食堂方面を見る

今回はここで蕎麦定食を食べました。

2時の昼休みの前に店内に入るのがここ信州での食堂利用の鉄則です。
全国チェーン店などは通しの営業ですが、地元の食堂は14時から17時くらいまで休みます。
最終入店が13時半などとなっている店もあります。
規律正しく昼食時間を取ることが多く、また人口もあまり多くはない信州の伝統なのでしょう。

お品書き。このほかに本日の定食がある

この日は14時前に入店。
念のため確認すると注文OKとのこと。

カウンターに座ります。
ホール係のおばさんがお茶と漬物を持ってきます。
落ち着くんだなあ、こういう応対。

着席するとお茶とお茶請けが供される

日替わり定食を注文します。
蕎麦と炊き込みご飯のセットです。
田舎風の愛想のない定食で、一見量的にも物足りないのですが、食後感は満足いった記憶があります。
また、ここの蕎麦は美味しいのです。

日替わり定食。冷たい蕎麦とおこわのセット

どんぶりに入った冷たい蕎麦と山菜おこわのセットがやってきました。
すすりこみの音を気にせずに盛大に昭和風の食べ方でやっつけます。

手打ち蕎麦は食べ応えがあります。
もち米で炊いたおこわも腹持ち十分です。
徳利に入ったツユがついてくるのもうれしいことです。
ツユで割ったそば湯がたっぷりいただけます。

都会風に愛想を付けるとしたら、油気のある小鉢をもう一品、ですが、ここは田舎。
これでいいのです。

上田トラゥム・ライゼでゴダール追悼

上田にあるミニシアターで、2022年に亡くなったゴダール追悼特集が上映された。
会場は上田映劇と同じNPOが運営している映画館トラゥム・ライゼ。

上田映劇、トラゥム・ライゼともに、ワンスクリーンでフィルム上映も可能な昔ながらの映画館。
上映作品はいわゆるミニシアター向けの作品が多い。

近年全国上映されたパゾリーニ(「テオレマ」「王女メデイア」)やブレッソン(「たぶん悪魔が」「湖のランスロ」)、ミムジー・ファーマー(「モア」「渚の果てにこの愛を」)などの旧名作の再輸入プログラムもカバーしているのがうれしい。

ゴダール追悼上映の全国プログラムもカバーされ、そのうちの2作品に駆け付けた。

「小さな兵隊」 1960年  ジャン=リュック・ゴダール監督  フランス

ゴダールの長編第二作であり、のちにゴダールの妻、アンナ・カリーナの長編デビュー作。
撮影は「勝手にしやがれ」と同じくアンリ・ドカエ。

フランスからの独立戦争であるアルジェリア戦争。
アルジェリアの独立派と保守派の、フランス国内における抗争を背景に、保守派の鉄砲玉として独立派の幹部を暗殺する主人公と、独立派の女性(アンナ・カリーナ)の出会いと別れを描く。

ハリウッド映画であれば、派手なアクションと男女間の立場を超えたロマンス、体制派の価値観に沿った結末とセンチメンタルな男女の分かれ(独立派の女性が、保守派の男の手の中で死亡)で終わるのがパターンだが、ゴダールの手法は全く異なる。

処女作「勝手にしやがれ」はハリウッドのB級ギャング映画に仮託していたその作風が、「小さな兵隊」では、一見スパイ映画に仮託した風ではあるが、ゴダール自身の特性を濃厚に漂わせる、重たく、暗い政治的作品となっている。

追悼上映パンフレットより

保守派の義勇兵を脱走しジュネーブの街を漂う主人公は、ゴダール映画の主人公らしく、とにかくしゃべりまくり、動き回る。
追跡する保守派の幹部から、脱走を免責する代わりに独立派の幹部の暗殺を命じられるが、優柔不断に避け続けたり、暗殺に失敗したりする。
独立派につかまり、証拠が残らないような拷問を延々とされる。
独立派の女性は拷問の末殺されたことをにおわす。

主人公の前に現れる独立派の女を、初々しいアンナ・カリーナが演じるが、作中臆面もなくカリーナにそそがれるゴダールの視線は、映画監督でなかったら最も女性にもてない(理解されない)であろうゴダールのオタクっぽい暗さに満ち満ちている。

なんて的を得たタイトルなんだ!

全編オールロケ、対話する人物の間を往復する手持ちカメラ、一つの芝居の間に関係のないカット(演技の後のオフショットだったり)が挟まる手法、はゴダール映画ならでは。

ヌーベルバーグの作家たちも、予算があれば豪華セットでクレーン撮影によるワンショットワンシークエンスの演出をしたかったと思う。
が予算がなく、何よりそこまでの経験、力量(演出力と俳優の演技力も)がない若手監督にとって、撮影セオリーをあえて無視したカメラはやむを得ないもの。
また、わざとらしいドラマチックさを排除する編集手法もゴダールならでは。

アルジェリア戦争という政治的なテーマは、例えば大島渚がどうしても「日本の夜と霧」を作らなければ前に進めなかったように、ゴダールにとっては必然のテーマだったのだろう。

そのためか、「勝手にしやがれ」「女は女である」「男性女性」といった、B級ギャングやミュージカル、ポップミュージックに仮託したときの軽やかさ、明るさがない作品となった。
作品に漂うのは重さと暗さ。
それこそがゴダールの本質なのだが。

一方でアンナ・カリーナを撮るときの、学生映画の作り手の主演女優に対するようなまなざしは、ほほえましいというかなんというか。
ゴダールのアンナに関する憧れは、次作「女は女である」でついに炸裂。
「小さな兵隊」ではぎこちなかったアンナの演技も満開となるのだった。

「カラビニエ」 1963年  ジャン=リュック・ゴダール監督  フランス

今回の追悼特集には「はなればなれに」がラインアップされていた。
残案ながら見逃がしたが、アンナ・カリーナ主演で、ギャング映画に仮託したミュージカルの色付けがある作品とのことだった。

「カラビニエ」はゴダールの一方のカラーである、暗い政治的メッセージに彩られた作品。

出演は、素人だったり無名の俳優だったりするが、主人公の家族役の2人の女優などは、アンナ・カリーナやのちのアンヌ・ヴィアゼムスキーに似ており、色気もある魅力的な女優で、ゴダールの女性の好みが見事に反映されている。

また、予算のなさはいつものことながら、トラクターにベニヤを被せたような戦車を1台と、戦闘シーンでは複数の爆薬を設置するなどの大盤振る舞いを見せている。
大掛かりな戦闘シーンは第二次大戦時のニューズリールで代用しているが。

トラゥムライゼ入り口
劇場の掲示板

王様の命令で戦争に行く主人公たち。
戦地では美女を思いのままにでき、財宝をわがものにできると信じた無知の主人公井たち。
戯画化され誇張され、また省略化された戦場場面を経て自宅に戻った二人が、家に待つ女性二人に持ち帰ったものは世界各地の絵葉書だった。
やがて王様はレジスタンスに追われ、主人公たちも王様側の兵隊に殺される。

ゴダール初期の作品で、寓話的内容ながら戦闘シーンなど、具体的な描写に心がけた作品となっている。
のちのゴダール作品の象徴性(「中国女」ではベトナム戦争の米軍爆撃機をプラモデルで表現)への移行以前の貴重な作品だった。

上映後の帰り道。上田の夜

甲府~韮崎 路線バスの旅

東京の自宅に息子の誕生会で帰りました。
畑の作物が心配で、自宅にゆっくりできず、すぐ山小舎に戻りました。
帰りはJRの各駅停車です。
いつもの甲府途中下車の後、思い立って韮崎まで路線バスに乗ってみました。

甲府駅に掲示された列車遅れの状況

この日の甲府はカンカン照り。
日に当たるだけでぐったりします。

途中下車後は駅前通りにあるいつもの定食屋へ。
これまたいつもの信玄鶏竜田揚げ定食の大盛。
揚げたての竜田揚げともども、おなかいっぱいになりました。

次に来るときは塩だれとんかつに挑戦してみようと思いつつ。
竜田揚げのほかには、焼き魚定食や、ハヤシライスの注文客が多いこの店。
甲府での昼飯は当分ここで決まりです。

甲府名物、信玄鶏の竜田揚げ定食

昼飯の前に駅前の路線バス案内所で、韮崎行きのバスの時刻と乗り場を確認しておきました。
韮崎行きの路線は2系統で、それぞれ毎日6本ほど運行されています。
食後の余った時間を駅ビルのパン屋さんのイートインでコーヒーを飲んで過ごし、カンカン照りの停留所へ。

駅前のロータリーには5か所ほど停留所があり、ほぼひっきりなしにバスが発着しています。
目指す、一高経由韮崎駅行きのバスは時刻どおりにやってきました。

甲府駅バスロータリー

案内所のお姉さんに教わった通りにSUICAを先にタッチして乗り込みます。
同乗者はほかに二人でした。

韮崎駅行きのバス車内

バスは駅の反対方向へ出ました。
韮崎を目指し、北西方向へ進みます。

甲府といえば武田神社へ続く道と、岡島デパートのある中心部しか知らない山小舎おじさん。
バスの窓越しに、いろんな方向に商店街が伸びている甲府の街の広さを認識しました。

沿線のショッピングセンター

しばらくは、郊外型の店舗が断続的に続く風景をバスが進みます。
やがて長野方面の山の景色が迫ってきます。
韮崎のエリアに入ったのでしょうか。
始発から乗った乗客はすでに降り、途中から乗った3人がいます。

韮崎に近づくと長野方面の山塊が迫る

それなりの規模がありながら人気の消え去った、今時の地方都市の商店街を通って韮崎駅に着きました。
駅の周辺には商業ビルと、公共施設が入った多目的ビルが建っています。

駅は自動改札ですが、列車ダイヤの自動表示などはありません。
待合室の奥には立食い蕎麦屋があります。

韮崎駅

茅野までの下り列車には時間があったので駅前をぶらぶらします。

まずは山梨交通の案内所へ。
念のため、長野方面への路線バスの有無を確認。
係の女性は丁寧に答えてくれました。
小淵沢止まりも含めて、長野方面のバスはないとのことでした。

駅前から見た風景。左奥の建物がカフェのあるビビル
駅前からは富士山が見える

続いて図書館などの公共施設と、土産物屋、カフェなどがあるビルへ。
カフェは市民の憩いの場にもなっているようです。

カフェのパン売り場を見ると、美味しそうなカレーパンがあったので購入。
買いながら店員のおばさんに聞きました。

駅前の韮崎高校サッカー部のインター杯優勝のこと。
中田ヒデのこと。

ヒデは韮崎高校サッカー部の出身だが、甲府の人間で韮崎高校に通ってきていたとのことでした。
地元のおばさんは何でも知っています。

韮崎効能優勝をたたえる球児の像

時間が来たのでホームに出て列車を待ちます。
ホームからも雪の溶けた富士山が大きく見えます。
駅の反対側には、何やら標語を書いた鳥居や、山の上の大観音が見えました。
もともとの韮崎らしさはここにあるような気がしました。

秋の反対側には朱塗りの鳥居
ホームから見える大観音

夏野菜の収穫始まる

2日続いた雨が上がり、畑に夏の日差しが突き刺さります。

じりじりと日差しが肌を焼き、帽子を被らないと頭がボーッとなります。

1週間ぶりの畑です。
トマトの枝が自由気ままに生い茂っています。
伸びすぎた脇芽を掻き、伸びた茎を支柱に縛るだけで一仕事です。
そろそろ、もう一段高い横渡しの支柱を組まなければなりません。

トマトの実が成り始めました。
ミニトマトの実には色が付き始めています。
収穫が大仕事になるのが今から想像できます。

大玉トマトの実が成り始めました
ミニトマトの実には色づきが・・・

なんと、マルチの脇にはこぼれ種から自然発芽したトマトが数本伸びています。
去年から見られる現象です。

緑一色ですが、トマトの自然発芽の芽が3本出ています

ズッキーニは実ができるのですが肥大せずに黄色く腐っています。
この日はやっと3本ほど収穫しました。
実が黄色くなるのは、高温、樹の成長不足などの原因があるようです。
そういえば樹の成長に例年の勢いがありません。
もう少し全盛期を待ちましょう。

ズッキーニ。実はつくのですが・・・

キューリの収穫が始まりました。
これから忙しくなるのでしょうか。
ズッキーニ同様、もう少し樹の勢いが欲しいところです。

キューリが数本ぶら下がています

葉の巻きがなかなか来なかったキャベツ。
小さいながら3玉を収穫しました。
外側の葉は例によって虫食いだらけです。

果たして食味と硬さはどうか?夏になっても葉が巻くのか、このままか。

この日の収穫。少量なので集荷には至らず

トウモロコシは勢いがあります。
直播した種も発芽しています。

真田温泉ふれあい真田館

上田市真田地区にある立ち寄り温泉施設、ふれあい真田館へ行ってきました。

真田氏の本拠地であった真田地区。
菅平、群馬長野原方面への入り口に位置する上田市の郊外です。

南向きの斜面に田畑が広がる純農村地帯でもあり、地区の直売所には地区で採れた季節の農産物が並びます。

7月に入ったばかりの雨の日、地区にある真田温泉ふれあい真田館へ立ち寄り、ひとっ風呂浴びてきました。

何年か前にも食事だけに寄ったことがある施設です。
とんかつ定食を給仕口で受け取った後、入浴客が休む大広間で食べたことを思い出します。
その時は関係者用の裏口から入場しました。

ふれあい真田館の正面入り口

今回は正面入り口から堂々の入場です。
入場料は大人500円。
これで温泉プールから、大浴場、大広間、食堂、売店などを利用できるのですからリーズナブルです。

エントランスではアニメキャラがお出迎え。六文銭の旗が見える

温泉は無色透明、かすかに漂う硫黄臭。
地元の人が三々五々集まっている浴室は土曜日の午後ながら空いています。
もちろん、ボデイソープとシャンプー付きです。
露天風呂もあります。

食堂のメニューも豊富だ

ゆっくり温泉に浸かった後は、大広間で休みます。
食堂は17時まで休みですが、給仕口わきにある給茶器から冷えた麦茶などが飲めます。
横になってひと眠り。

周りは地元のファミリーと、将棋をするお年寄りです。
たっぷりと休養できました。

館内には椅子が並んだロビー、農産物、菓子、飲料、雑貨などの売店もあり、ファミリー客などで終始にぎわっていました。

雨の中、駐車場から帰るとき周りのナンバープレートを見るとほとんど全部が地元の長野ナンバーでした。

上田市街からも近いので、いつでもフラッと寄りたくなる立寄り湯でした。