田舎暮らしにあこがれる定年者へ
定年後のライフスタイルとして、「田舎暮らし」は一つの選択肢になっている。
テレビ番組の「人生の楽園」ではないが、退職後は夫婦で山麓にログハウスでも建て、悠々自適に趣味のバードウオッチングでも満喫、という第二の人生像が、今は一種のステータス化しているかのもしれない。
いかような第二の人生を選択しようが、はたまた「第一の人生」たる現役生活にできる限りしがみつこうが、当事者の自由ではある。
ここでは、定年後の第二の人生に「田舎暮らし」を志向するご同輩に、移住先として考えるときの「別荘地」と「集落」について考えてみたい。
定年おじさんのささやかな経験を紹介する。
「別荘地」とは
ここでいう「別荘地」とは文字通りの別荘地のこと。
立地は、たいてい、地方の限界集落のさらに先の、傾斜地を切り開いた場所にある。
地元の人にとっては、山菜取りにしか出かけなかったような場所で、標高が1000メートル以上で1500メートルのこともある。
観光地に隣接していることも多い。
都市部からは遠いが、高速道路からのアクセスや、主要街道筋へのアクセスは考慮されている。と言ってもインターまで1時間、は普通だが。
1区画の広さは100~200坪ほど。土地は自治体が所有していることが多いので、購入者が土地に設定できるのは借地権となる。
建物は、購入者が建て、購入者の所有権が設定できる。
簡易水道、電気などのライフラインは整備されているが、都市ガスや下水道までは通っていないことが多い。
別荘地内の道路等共有部分の整備や、ごみ収集場所の管理などは管理会社が行い、購入者は管理料金を払うのが通例。
なお、購入者は別荘に住む住まないにかかわらず、建物の固定資産税や住民税(住民票を置かなくても建物の所有者に課税される)の納税義務を負う。
地元の自治体は、いかに別荘購買者を開拓し、管理費を徴収し(管理会社は自治体の第三セクターであることが多い)、また税収など周辺利益を上げるかに関心がある。
いわば、別荘経営は地方自治体の数少ない「産業」となっている。
バブル期までは、売出し即完売、だったが、時代と世代が変わり、今はがらがら。その気さえあればすぐ買える。
今時の購買層は、イメージ通りの「夏だけ避暑にやってくる年配の金持ち」もいるにはいるが、定年後に定住している夫婦や、単身で暮らす高年齢者など様々。
夏の一時期以外は人気が少ないのは、昔から変わらず。
長野県内の別荘地なら、首都圏と中京、近畿圏からが多い。
「集落」とは
「集落」とは、ここでは地方の市町村の一地域のことをいい、長野県なら、○○町○○区、などと住居表示されるところの、○○区を指す。
「集落」への移住とは、その○○区の一員として住むことをいう。
地方の場合、住民の帰属意識は、合併の進んだ市町村ではなく、集落にある。
地元では、○○町在住というより、より小規模の○○区在住という方が通りがよく、実感がわく。
本州の集落は歴史が古く、狭い傾斜した街道にへばりつくように形成されること多い。
街道から家々に入る路地はさらに狭く、傾斜している。
家屋の敷地は案外狭く、畑は近隣に数件分がまとまっていることが多い。
現代の感覚からすれば、住宅地としての利便性に乏しい。
住民は代々その集落に住んでおり、少数なうえに平均年齢は高い。
働き手は職場に通っており、平日昼間はほとんど人気がない。
郡部の街道筋をドライブしていて、ほとんど歩行者を見かけないわけである。
なお、今時はかなりの郡部でも下水道が整備されており、奥地の別荘地よりライフラインは近代化しているが、都市部や、大規模商店へのアクセスは別荘地に次いでよくない。
自治体が予算を組んで移住者や子供への優遇策を行っていることもあるが、郡部で全くのIターン者が完全に定住したという話はあまり聞かない。
Uターンした人が、集落の古民家などを拠点にパン屋で定住している例はある。
以降、その2、「別荘地の現実」「集落の現実」へ続く。