古代・東山道という街道があった。
「令和」の出典という万葉集に、「信濃路は今の墾り道刈株に足踏しむな履はけ我が夫」の歌がある。
律令時代の良民の義務として、防人になるべく九州へ向かう夫を、東山道で見送った妻が詠んだもの。
万葉集に詠われた東山道は、江戸時代に五街道が整備されるまでの間、畿内から東国へ向かう主要街道の一つだった。
東山道が信濃路に至り、現松本盆地から峠を越えて現上田盆地へ降りる道沿いに、現青木村がある。
青木村に、奈良時代に創立され、東山道の浦野駅(当時の宿場)にちなんだ大法寺があり、境内に三重塔がひっそりとたたずむ。
三重塔は国宝に指定されている。
三重塔の由来と癒し
西暦1300年ころの造営と伝えられる三重塔。
鎌倉時代から南北朝時代に移る時代である。
地方にありながら、くずれのない正規の手法で建てられた、と現代において評価される塔。
当時の中央の工匠によって造営された正統的な造りの塔とのこと。
「見返りの塔」の別名があらわす通りの完璧なフォルムと、周囲の風景との調和が見るものを圧倒する。
古より東山道を行き来する旅人を見送りまた迎えたのであろう、当時の一大スポットにして名勝地である。
大法寺の本堂もまた古く存在感がある。
境内にたたずむお地蔵さん。
三重塔への沿道には羅漢が立っている。
観音堂の建物もまた大掛かりだ。
境内の一番奥、山を背景に立つ三重塔。
今は訪れる人も少ないだけに一層の気高さを備える。
静かに訪れる人を癒すパワースポットである。