山小舎では普段はテレビがつけっぱなしです。
ある日、ローカル放送のニュースで、「諏訪大明神絵詞」の研究をしている博物館学芸員のことをやっていました。
放送内容は、県内の博物館の女性の学芸員が専門の「諏訪大明神絵詞」をわかりやすくマンガにしてブログで発信していたところ、出版社から声がかかり本にした、とのことだった。
諏訪大社のおひざ元である諏訪地方。
諏訪大明神、お諏訪様、と呼ばれる存在は身近なものであると同時に、正体不明、謎の存在でもある。
諏訪大社の主宰神がタケミナカタの尊であることは知られているが、古事記のカミであるタケミナカタが本来の科野の神様なのか?
また、諏訪大社の古い古い歴史の中での信仰上の神秘的な流れ、武力勢力との迎合・反発という現実的な流れは一地方の歴史というにはあまりに大河ドラマ的ダイナミズムに満ち満ちており、深い闇にも閉ざされている。
諏訪大明神、お諏訪様、に関心は持っていても原典である「諏訪大明神絵詞」は難しすぎて訳が分からない。
そんな山小舎おじさんにとって、研究者によるマンガ読み下し本は格好の入門書になりそうだ。
テレビのニュースもそこそこに、おじさんは諏訪市にある本屋へ行きました。
郷土本コーナーへ意気揚々と向かうが何度探してもその本はありません。
レジのお姉さんに聞いてみました。
お姉さんもすぐにはわかりません。
ネットを叩いて検索してもらうと、どうやら当該本は書店には流通しておらず、諏訪大社本宮や神宮寺、地域の文化センターでのみ売られているとのことでした。
お姉さんに感謝し、その足で諏訪大社上社本宮へ向かいました。
拝殿近くにあるおみくじ売り場で巫女さんから購入できました。
「マンガでよむ諏訪大明神絵詞」は五味夏希さんという女性研究者による本。
原著のエピソードを女性らしいやさしいマンガで読み下している。
本著で取り上げたエピソードは数編。
マンガからは著者の人柄や、原著に対するリスペクトが伝わってくる。
山小舎おじさんが「諏訪大明神絵詞」という存在を知ったのは、こちらも女性著者による「諏訪の神様が気になるの」(2020年信濃毎日新聞社刊)という本でのこと。
その本で繰り広げられていたのは、古事記や絵詞からの、国譲りなどの神話の世界や、諏訪大社を巡る大祝、神長官、ミシャクジといった神官の世界。
とても神秘的でおどろおどろしくもあり、また一方で血なまぐさくもあるものでした。
「マンガでよむ諏訪大明神絵詞」では本来の絵詞が持っているであろう、血なまぐさい権力争いの歴史は採録されてはいません。
一方で、ほのぼのしたエピソード、ありがたい仏様やお坊さんのエピソードが採録されています。
著者のやさしいマンガからほのぼの感が伝わってくるのですが、よく内容を読めば、厳しい信仰の世界や、カミの厳しさが読み取れるのかもしれません。