「野菜だより」という月刊雑誌があります。
ブテイック社という出版社が出している大版のカラフルな雑誌です。
書店では、移住情報雑誌、健康雑誌などのコーナーに置かれていることが多い、家庭菜園愛好者向けの雑誌です。

その3月号の巻頭特集がガッテン農法でした。

ガッテン農法は三浦伸章という人が編み出した農法で、藁をねじったものを埋めて畑の性質を改善し、野菜の育ちを良くするものです。
どういう風に改善するのかというと、土中の空気や水分の流れを良くし、微生物を活性化するようです。
また、野菜がどう育つのかというと、早く大きく育つのではなく、遅く小さく育つのですが、野菜本来の味に育つようです。

そしてこれが肝心なのですが、ガッテン農法式に畑を作ると、半永久的に無肥料、無農薬で野菜ができるとのことなのです。
その畑の作り方は、地中の耕盤層まで掘り下げて、硬い層を砕き、ススキや糠、落ち葉、酢、炭などを入れて土を戻すというものです。
そうやって作った畝を毎年使うわけです。
山小舎おじさんの畑ではこうやってすでに数年の野菜作りを行っています。
さて、雑誌「野菜作り」ではどのようにガッテン農法が紹介されているのでしょう?
結論からいえば、かなり簡便に、またその理論をあえてぼかしたうえで、テクニック面だけをグラフィックな記事にしておりました。

ガッテン式畝づくりはかなり簡便なものになって紹介されていました。
また、肝心のネジネジ(本来は藁をねじって作る)の作り方がこれ以上なく簡便化されていました。
またその理論には全く触れていませんでした。

もともとガッテン農法の三浦さんはたくさんの経験的知識の上に、独特の感性を持ち、未踏の世界へ足を踏み入れたひと。
「科学的」な世界は超越しており、「信じるか信じないか」のレベル。
それを雑誌で紹介すればオカルトとして扱われるでしょう。
例えば「現代農業」などでは取り上げられないでしょう。
ということは、大規模な商業ベースの農業とは相いれないわけです。
自給自足ベースでいえば究極の方法なのですが。
ということで、家庭菜園が趣味の「意識の高い」方々にアピールする「無農薬」「省力」「斬新」といった部分だけを取り出して記事にしたのが「野菜だより」のガッテン農法特集でした。

世の中には玉石混交、いろんな技術、経験があります。
畑の世界は、植物学が解き明かした科学的世界のおそらく数倍もの未解明の世界があるのではないでしょうか。
経験としてその世界に分け入った先人が、これまで無数にいたものと思います。
私たちはこれらの遺産から自分に合うものを学んでいけばいいと思います。